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『社長、おはようございます』
「んぁ…おはよう」
てっきり毎朝のように憲二が挨拶に来ると思って拍子抜けした。
「け…神崎は?」
『神崎さんはお休みです。昨夜遅く電話があって。悪そうでした』
「そうか…病院は?」
『病院に行くような病気ではありませんから。社長はご存じのはず』
コイツは苦手だ、バシバシ遠慮なく発言するから痛い。
「お前には敵わんな」
『社長を見つめる神崎さんを何年見てると思ってるんですか』
「そうだよな…悪かった。なあ美山、様子見に行ってくれないか?」
『社長…仕事がお出来になるのは良く存じてます。それを承知で申し上げますが…あなたはバカなんですか?昨夜の電話で、神崎さんが言ってましたが、社長の事は諦めると。自分には愛してくれる人がいるからその人に委ねようかって。このままじゃ、その方に取られますけどよろしいんですか?』
「……神崎が幸せになるなら」
『わかりました。ではもう何も言いません。知りませんよ、最後に泣くのはあなたですからね?私は忠告しましたよ?』
「……」
『彼に辞められると困るんですが…仕方ないですね…』
「は?」
『当たり前でしょう?神崎さんがこのままあなたの側にいられるとお思いですか?ほんっとにバカですね。ここで手を離したら二度と会えないでしょうね』
そんな…憲二も俺から去ると言うのか?
でも、俺に引き留める権利はない。
憲二が他の誰かと?…幸せに?…俺以外の誰かと?
「なぁ美山…」
『はい』
「お前知ってるか?神崎の行きつけ…」
『さぁ?どっちでしょうか?』
「幾つもあんのか?」
『普通のバーか…そっちのバー…』
「多分…そっちの方だ」
『知ってますよ?私も行き付けなので』
「はぁ?」
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