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「寛人さん…待ってよ。どこ行くの?」
「お前とちゃんと話したい」
「話すって…ここ寛人さんの家…」
「今更なんだよ…いつも合鍵使って勝手に入ってるじゃねーか」
「う…今はちょっと状況が…違うと言うかなんと言うか…」
「憲二が嫌ならやめる、時間が必要か?」
「それは…身体は…欲しがってるけど、心が追いついてないんです…」
「そんなのいいから、身体は後回しだ。まずは心が先だよ?美味しいコーヒー淹れてやるから、おいで?好きだろ?」
憲二は黙って、寛人の手を取った。
俺…あなたが淹れてくれるコーヒーが大好きなんだ。
「どうぞ…」
コーヒーがふたつカチャンとガラステーブルに音を奏でる。
「ふぅふぅ…あつっ」
「クスっ、気をつけろ」
「ん…やっぱり美味しい…」
「やっぱりって?」
「俺、あなたの淹れたコーヒー好きなんです」
寛人は憲二の顎に手をかけ、自分の方を向かせる。
「コーヒーだけか?」
「へ…?」
「好きなのはコーヒーだけかと聞いている」
「いや…その…俺の好きなあなたが…俺の為に淹れてくれるから…」
「だろう?」
「なんか寛人さん、いつもと雰囲気違いませんか?」
「そうか?好きなヤツを落とそうとしてるんだ。当然だろ?」
「好きなヤツって…俺?」
「他に誰がいるんだ?」
「でも…寛人さんは順也の事が…」
「そうだな…でも…気づいたんだ。お前がいつも側にいてくれたから…甘えてた。お前が俺を好きな事は知ってたから。お前の気持ちにあぐらをかいてたんだ。お前が俺から離れようとして気づいた。悪かった…」
「もういいんだ…寛人さん」
「後は罪悪感もあった。順也も憲二も俺を愛してくれたのに、順也がいなくなったからお前なんて…できなかった…」
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