以心伝心

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「……会田さんにこんなお願いをするのは心苦しいんだけど、どうしてもこのまま何もできずにいるのは耐えられなくて。せめてもう一度だけでも志緒美ちゃんに会って、声だけでも……遠くから顔を見るだけでもできたらって……」  そのままどんどん萎んでいきそうになる新井君の肩を、私は強すぎるぐらいの力で元気いっぱい叩いた。 「わかった! 任せといて! すぐにでも志緒美に連絡するから」 「連絡するって……でも……」 「大丈夫、わかってるよ」  だって新井君は、私にそっくりなんだから。言われなくてもどうして欲しいかなんて手に取るようにわかる。 「新井君の事なんて、余計な事は何にも言わない。自然に会えるように、ちゃんと調整するから」 「あ、ありがとう会田さん!」  新井君の目が心なしか潤んでいるのを見て、私の胸はチクリと痛んだ。 「それに……」  胸に膨らんだ苦々しいものを身体の奥底に追いやるように、大きく深呼吸して続ける。 「きっと志緒美も、新井君の事嫌いじゃないと思うよ。だからきっと、新井君と志緒美ならうまく行くと思う」 「ほ、本当?」  まんざらでもなさそうに、新井君がはにかむ。  志緒美と私はタイプこそ違うけど、ぴったりと波長が噛み合うみたいでとっても仲良しだもの。私の生き写しである新井君とだって、きっとうまく行くに決まってる。 「ありがとう、会田さん。やっぱり君に会えて、良かった」 「ううん。友達だもん。当然でしょ」  私は強がりだけで取り繕った、上っ面だけの満面の笑顔を返した。  生き別れた双子の兄妹のように近しく思えていた新井君の存在が、急速に遠ざかっていくのが目に見えるようだった。
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