4人が本棚に入れています
本棚に追加
「……会田さんにこんなお願いをするのは心苦しいんだけど、どうしてもこのまま何もできずにいるのは耐えられなくて。せめてもう一度だけでも志緒美ちゃんに会って、声だけでも……遠くから顔を見るだけでもできたらって……」
そのままどんどん萎んでいきそうになる新井君の肩を、私は強すぎるぐらいの力で元気いっぱい叩いた。
「わかった! 任せといて! すぐにでも志緒美に連絡するから」
「連絡するって……でも……」
「大丈夫、わかってるよ」
だって新井君は、私にそっくりなんだから。言われなくてもどうして欲しいかなんて手に取るようにわかる。
「新井君の事なんて、余計な事は何にも言わない。自然に会えるように、ちゃんと調整するから」
「あ、ありがとう会田さん!」
新井君の目が心なしか潤んでいるのを見て、私の胸はチクリと痛んだ。
「それに……」
胸に膨らんだ苦々しいものを身体の奥底に追いやるように、大きく深呼吸して続ける。
「きっと志緒美も、新井君の事嫌いじゃないと思うよ。だからきっと、新井君と志緒美ならうまく行くと思う」
「ほ、本当?」
まんざらでもなさそうに、新井君がはにかむ。
志緒美と私はタイプこそ違うけど、ぴったりと波長が噛み合うみたいでとっても仲良しだもの。私の生き写しである新井君とだって、きっとうまく行くに決まってる。
「ありがとう、会田さん。やっぱり君に会えて、良かった」
「ううん。友達だもん。当然でしょ」
私は強がりだけで取り繕った、上っ面だけの満面の笑顔を返した。
生き別れた双子の兄妹のように近しく思えていた新井君の存在が、急速に遠ざかっていくのが目に見えるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!