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「じゃ、帰るぞー」
「またなー」
「じゃ、また明日なー。あ、風ノ助? 貸してもらった教科書は?」
「ああ、鞄の中だ」
俺は学校生活を満喫しているんだなあ。
笑顔で友達に手を振って、家路についた。
昨日のイベントの続きを少し考案すれば、今日の予定はだいたい終わり。じゃあ、またおっちゃん家のゲームセンターに行ってみようかな。
古くて煤ぼけていて、誰も寄らなくなったゲームセンター。
近所にあって、子供の頃からよく通っていた。
おっちゃんは、親戚にあたる人で昔から、サラリーマンもしていて、俺が高校二年になったら、いきなり「社会にでたら、両立は大変だぞ。風ノ助くんもいい加減、将来のことを考えてだなあ」と、愚痴なんだか説教なんだかを、零すようになった。
今日は、おっちゃんはいない。
恐らくは残業なんだろうな。
薄暗い一室の片隅にポツンとあるゲームに腰掛けて、くずしておいた100円玉を用意した。
おっちゃんからは、このゲームはだいぶ古いから、高難易度だし、もしかしたら筐体が壊れてしまうかも知れないから、やっちゃダメだと念を押されていた。
けれども、面白そうだから、俺はたまにおっちゃんの目を盗んでは、ゲームをしていた。たまに、画面が暗くなったり、ボタンを押しても反応もない時があるし、凄い難易度だけど、一度はクリアしてみたかったんだ。
「さあて、いっちょやってみようかな。コツは掴めた。今度こそはクリアしてやるぞー」
俺はこのジパングという名のゲームが好きだった。
なんでも、伊達政宗が主人公の戦国時代ものだ。
夜にはまだ時間がるんだ。
ゲームを楽しむ時間はいっぱいあるんだな。
ーーーー
ラスボスの織田信長との合戦辺りで、ボタンを連打していると、バチッと、古いゲームの筐体が火花を吹いた。
それから、高圧電流が俺の腕から頭までを通り過ぎていった……。
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