オメデト

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　次々と携帯に入ってくる新年の挨拶。

誰への返信よりも先に、佐野に『ありがとう』を打ち込んだ。

『もう30で、めでたくもないけど、嬉しいです』

彼のいるロンドンはまだ大晦日だろう。

『一足先に、明けましておめでとう』

大手企業に務めて、今年からロンドンに赴任しているらしい。佐野はやっぱり、しっかりしてて、外れていない。

高校へ行ってからも、年に一度、ニ度、メッセージを交換する。

佐野は私の誕生日を覚えていて、ご丁寧に、毎年、新年の挨拶より先に、誕生日を祝う。

今年は、珍しく、郵便の挨拶が届いたと思ったら、ロンドンからのクリスマスカードだった。

年賀状代わりのクリスマスカードに挟まれた、くすぐったくなるような笑顔の佐野の写真。

カードを閉じると、小物を入れた机の上段の引き出しに、そのトナカイのカードをそっと入れた。

入れっぱなしのお守りや、ポストカードに混じった、古いプルタブを指先でなぞって、引き出しを閉じた。

30なんて、早いって、言ったくせに。

『先日、クリスマスカード、届きました。

ご結婚、おめでとう!』