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トントン、とつい3分前と同じ音を立てて階段を下る。 「イツキ、起きない?」 そう言って困った顔をしてみせるのは、イツキの母さんだ。 「ぜんぜんダメ。」 「ほんっとに困った子。コウちゃん、スープ飲んでくでしょ?」 「飲むー。お、ミウ、おはよ。」 「おはよーコウちゃん。」 イツキの妹のミウは、イツキと違って寝起きがすこぶる良い。小学3年生、しっかりもので、毎朝俺がくる時間にはいつもすっかり身支度を整えて食卓についている。 「あれ、そのピン、初めて見る。」 「いいでしょ。リノちゃんとおそろいなの。」 「へぇ。いいな、可愛いよ。」 「ありがとう。」 へへ、と少しはにかんだ表情がイツキとそっくりだ。 「コウちゃんモテるでしょう。」 コーンスープを運んできたイツキの母さんがからかうように言う。 「ぜーんぜん。いただきまーす。」 「はい、召し上がれ。」 本当のところ俺は結構モテる方だと思う。 だけど、それ以上にモテるのはイツキだ。 昨日だってまたこの前と違う女子と…… いいや、考えるのはやめよう。 せっかくのおばちゃんのコーンスープが冷めちまう。
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