245人が本棚に入れています
本棚に追加
ぐずぐずと泣き続けるイツキをバスタオルで拭いてやって、服を着せ、リビングまで手を引いて歩き、ソファに座らせる。ドライヤーの風を浴びせても、イツキはぼんやりしてされるがままだ。
電子レンジで牛乳をあたため、表面にできた薄い膜をとる。カップを渡すと、イツキは両手で抱えるようにして一口こくりと飲んだ。
「落ち着いた?」
一旦ひっこんでいた涙がまたじわりと瞳に滲む。
「嘘つき。」
「嘘?」
「チサちゃんと、付き合ってないって言ったのに。」
「チサ?嘘じゃねぇよ。」
「だって……っ、傘……っ、一緒に入ってた……っ」
「一緒に……って、イツキやっぱり学校の方まで来てくれてたのか?ごめん俺、」
「めちゃくちゃ楽しそうだった……2人で、……っ、」
「ちがうよ、」
「手、繋いでた。」
「は??繋いでねぇよ、あ、あれかな、車きて」
「なんもないって言ったじゃん。」
「なんもねぇよ。ねぇ、イツキ、聞いて、」
「ばか。俺の方が、ずっと好きだったのに。手、とか触らせてんじゃねぇよ。ぜんぶ俺のなのに。ばか、はげ……」
ぼろぼろと涙を零すイツキの手からカップを受け取る。
熱を持った手をそのままそっと引き寄せ、たまらず抱きしめる。
もう泣かせないって、決めたのに。
最初のコメントを投稿しよう!