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何かとんでもない間違いを犯してしまったのではないかと背中がゾワリとした。
言うべきなんだろう。たぶん。
でも、なんて?
『俺、イツキが寝てる間にいつもキスしてたんだぞ。』
って?
は?
キモすぎるだろ。
軽蔑した眼差しを想像するだけで吐きそうだ。
いや、吐きたくなるのはイツキか。
どうかしてた。
初めての時……あの時はイツキが寝ぼけて俺を抱き寄せてきて……「すき」って、誰かに向けられた言葉に嫉妬して……
待てよ、でもイツキ、俺のことずっと好きだったって、ずっと、って……いつから?
「……ぷっ、」
「イツキ??」
「ふはっ、あはは、なにさっきから1人で難しい顔してんだよ。」
「いや、えぇと……」
答えを探してもごもごしている間も、イツキはくすくす笑い続ける。
「ふふ。あ、コウ、てか今何時?」
「ん〜8時ちょっとすぎくらい。」
「えっっ部活は??」
「休みんなった。」
「そうなん?」
「うん。体育館雨漏りしてんだって。ちなみに、明日も休み。」
「まじか。」
「あさっても。」
「ガチ?」
「ガチ。」
「ガチかぁ……」
イツキは抱き枕みたいに俺に抱きついて鼻を擦り寄せる。ふわふわした髪が首筋に当たる。
「ふふっ、くすぐってぇよ。」
「だぁって嬉しーじゃん。」
「イツキなんか予定とかある?」
「なんも。」
「どっか遊び行く?……2人で。」
「行く!!めっちゃ行く!!」
「ははっ、なんだよめっちゃ行くって。でももちょっと寝るか。まだ眠いだろ。」
「ん〜……うん。」
「じゃー昼過ぎに出掛けよ。」
「うん。」
「おやすみ。」
髪をポフポフと撫でると、イツキはそれに応える様に俺を抱きしめる腕にぎゅうと力を入れた。
「おやすみぃ。」
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