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「そっちの手も貸して。」 「こっち?」 「うん。」 両方の手を繋いで向かい合うと、フォークダンスでも始まるみたいな格好になった。 「イツキ?」 「今日、ありがとうな。ほんと。楽しかった。」 「うん。こっちこそ。」 「一緒にどっか行くとか映画見るとか、手、繋ぐとか、生まれてから今日までコウと散々やってきたことなのに、やってることおんなじでも全然違った気がする。うまく言えないけど。」 「わかるよ。」 「コウ、あのさっ」 繋いだ手にぎゅうと力が入る。 「ん?」 「だっ、だんかいって、次、なんでしょーか。」 「だんかい?何?なぞなぞ?」 「ばか。なぞなぞじゃねぇよ。だっから、『段階踏んで』って、言ったじゃん?」 段階……、って、え、 思い切ったように見上げたイツキの潤んだ瞳と恥ずかしそうな表情を見ればそれば明らかだった。 付き合い始めた2人が手を繋いだら次に踏む段階っていったら、とか、付き合い初めて何回目のデートで、とか、シチュエーションとかムードとか、ぐるぐる考えるだけ無駄で。 何よりも俺が、目の前のかわいい幼馴染に、恋人に、キスしたい。 心臓を痛いくらい動悸させながら顔を近づけるとイツキのふわふわした前髪がおでこに当たる。 ……。 ちがう、駄目だ。 俺まだ、イツキに大事なこと話してない。 触れ合う寸前だった唇から距離をとり、繋がれていた手もそっと解いて、精一杯大切にイツキを抱きしめた。 「イツキ、俺、お前に言ってないことある。」 「え、なに。」 「言ったら嫌われるかもって、けどこれ言っとかないと、」 あぁきっと、幸せな時間はこれで終わりなんだ。 「軽蔑してくれて、構わないから。」 「なんだよ。怖ぇよ。」 「俺……イツキにずっと」
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