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「おはよーございまーす。」
「あら、コウちゃんおはよう。ごめんね、イツキ、まだ寝てるの。」
「ほーい。」
トントントントンと、小気味良い音を立てて階段を上がる。
この17年間で何度この階段を上ったか。それこそ自分の家と同じくらい。階段だけじゃ無い、この家のどこだって目をつぶって歩いても何にもぶつからずに生活できる自信がある。
「イツキー入るぞー」
黒とグレーのストライプのベッドカバーは乱れに乱れ、スラリとした右足がゆるゆるのハーフパンツのせいで太腿まで露わになっている。
ごくり、生唾を飲み込み、むらむらしそうになる心と身体を滅却する。
「イツキ、起きろー。朝だぞー。」
起きない。
イツキは寝起きがめちゃくちゃ悪くて、これくらいの声掛けでは起きないんだ。……絶対。
「イツキ。」
もう一度呼びかける。
反応無し。
睫毛長ぇな。腹立つ程綺麗な顔してる。
ちゅ。
小さな唇は変わらずにすぅすぅと安らかな寝息を立てる。
起きないお前が悪い。
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