初詣

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さ、寒… 外の空気の冷たさに、思わず身体がぶるりと震える。 ほっぺたに冷たいモノが当たる。 ん? ああ、雪かぁ〜。 通りで寒いハズだ…。 ホント俺も、モノ好きだよな。 こんな寒い日のこんな真夜中にわざわざ出歩くなんて…。 それでも。 俺は、ひたすら歩いていく。 10分程進んでいくと、街頭の灯りの下に人影が見える。 あ… 「おーい、こっちこっちー」 やたらと嬉しげにブンブン手を振る、アレは。 彼こそ、俺の大事な恋人。 俺も目一杯の笑顔で、応える。 「おー、お待たせー」 あいつは、いつも約束の時間より早めに着いてるんだ。 「俺も今、来たトコ」 見え透いた嘘を付く。 でも、そうやって俺に気を使わせない様にしてくれるこいつが好きだ。 今日は大晦日。 これから俺たちは、二人で一緒に初詣に行くんだ。 普段は学校も違うから、こうやって一緒に歩くことも少ないから。 親にも友だちと初詣って言えば、こんな真夜中でも出掛ける事に文句も言わないしな。 俺たちは、二人で並ぶとどちらからともなく、手を繋いだ。 その手は少し冷たくなってた。 俺は、その手をダウンコートのポケットにおもむろに突っ込む。 「えっ、あ…」 照れて俯いた耳が真っ赤。 ふふ、こいつ照れてやんの。 こーゆートコが可愛いーんだよな。 絶対言ってやんないけど。 俺は、こんな寒い夜に胸の内と手の平がホカホカと温かくなるのを感じながら、ちょっとだけ遠回りをして、神社への道を歩いていった。 あ…。除夜の鐘。 「「あけましておめでとう!」」 ー完ー
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