白うさぎと僕の時計のおはなし

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 体内時計を返してもらったはずなのに、どうして今日もサークルの集合時間に遅れたのかって? 鋭いなあ。  結論から言うと、直ってなかったんだよ、僕の体内時計。今は、うん、多分午後三時くらいを指しているだろう。でなきゃ、ここまでバタークッキーがおいしいはずはない。  でも最後の一個はきみにゆずろう。遅れてきた罪ほろぼしだ。   バタークッキーは全部なくなったのに、まだバターの香りがするだろう。  そうなんだ。白うさぎが僕の体内時計の修理に使った、「とびきりいい油」ってのがどうも、バターだったようなんだ。多分、白うさぎが持ってる中で一番いい香りのやつ。  おかげで僕の体内時計はいつでも午後三時。時間の止まったおかしなお茶会の仲間入りだ。一緒にバタークッキーを食べたんだから、きみも一緒だよ。えっ、仲間に入る気はない? それはとっても残念だ。  いつでもバターの香りがするし体内時計は午後三時なものだから、お菓子が食べたくなって作ってしまうんだよ。これが僕が最近よくお菓子を作る理由さ。  だからお菓子作りが上手くなっただろう。白うさぎにも食べさせてあげたいくらいだ。よかったら感想を聞かせておくれよ。  お話よりバタークッキーのほうがよくできていたから、童話作家より菓子屋になったほうがいい、だって? まいったなあ、本当の話なんだってば。
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