白うさぎと僕の時計のおはなし

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 その日は、前日の夜遅くまで起きていたせいで、ちょっと講義中うとうとしていたんだ。  何をしていたのかって? このサークルの会誌のための原稿を書いていたんだよ。僕っていいメンバーだろ? もっと早くからやっていれば、夜更かししなくてよかったのにって? そりゃあ、そうだけどさ。  精神分析学の講義中、僕の眠気はピークに達していた。講義の内容は、眠っている間に見る夢がどんな意味を持っているのかというものだった。  内容はとっても面白いんだが、先生の声がなんとも眠気を誘う性質のものでね。僕以外にも二十人は確実にうとうとしてたと思うよ。  僕は巨大な羊のような睡魔と闘いながら、ミミズがのたくるどころか悪魔が踊り狂ったような字でノートをとっていた。  視界の端を白いものが横切った。もしかしてほかの誰かの睡魔が逃げ出したのだろうか。自力で睡魔を撃退した勇者がどんな人なのかを確かめたくて、ぼくはきょろきょろした。  眠気のせいで思考がおかしくなっていたのは認めるよ。  えっ、僕はいつでもこんなようなことを考えてばかりいるって? そんなことは・・・・・・いや、そういえばそうだね。きみは実に僕への理解が深いようだ。
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