奔逸

　騒がしい音楽、自信に満ち溢れた人たち、私をこの場所に呼び出した理由なんて訊かなくても分かった。それでも私は平然を装い、淡々と進んだ。そこには何となく見覚えのある人が楽しそうにお酒を呑んでいた。

「Kさんですか」聴いたこともない音楽に身体を揺らす人間に声を掛けるのは、少し勇気が必要だった。

「あぁ、えっと、何処かで会ったことあるっけ」Kさんはヘラヘラしている。

「貴方に呼ばれて来たんですけど」それでも知らないフリを続けている。