奔逸

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 今日初めて会った赤の他人を目の前に、丁寧な喧嘩が始まると覚悟した私に苛立った。Kさんらしい、と思った時間を返して欲しい。  吹き抜けの遠い天井から自分の頭が小さく見えた。周りの笑い声と話し声、激しい音楽、全てが一斉に大きくなった。同じ空間にいる全ての人間に心が読まれているようで怖くなった。  気まずいなんてそんな簡単な言葉では足りない。一刻も早くこの場を立ち去らなければいけない、そう私の心が訴えていた。だけど、もう引き下がれない。進むしかない。こうなったら強行突破だ。  経験はお金で買うものか未だに分からないが、入場料だけで面白い経験ができるなら安いもんだ。この根拠のない自信と、誰かにお裾分けしたいくらい有り余るポジティブさには毎度呆れる。
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