彼女が「おめでとう」を言う理由

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 ――人類が高機能AI「ヤルダバオート」によって、地球圏を追われて幾星霜(いくせいそう)。火星圏で再起を図る人類は、AIを全廃した代わりに遺伝子調整児(デザイナーベビー)の大量生産を開始した。  子供達の脳には特殊な改造が施され、二つの能力が与えられていた。  一つは、機械を超える演算能力を持った生態演算ユニットとしての能力。  もう一つは、AI軍の宇宙戦闘機に対抗すべく誕生した、一騎当千の人型機動兵器「サタナエル」のパイロットとしての能力。  子供達はアカデミーへと入れられ、二十歳までの間パイロットとしての英才教育と演算ユニットとしての調整を受ける。  そして十三歳を過ぎ、適正基準をクリアしたものから順次、正パイロットの訓練課程へ転籍し、やがて戦場へと赴くことになる。アカデミーでは、正パイロット課程への転籍を「卒業」と呼んでいた。
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