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彼女が「おめでとう」を言う理由
「――おめでとうAA11BC。君は適正基準をクリアした。来月から正パイロットコースへ転籍となる。人類再興の為に、その能力を発揮してくれ」
私が今月の卒業者の名を告げると、教室は盛大な拍手の音に包まれた――が、殆どの生徒達の目は笑っていなかった。彼ら彼女らの目はむしろ、嫉妬や焦燥感、無力感と言った感情に支配されていた。……いつものことだ。
そして――彼女だけが他のクラスメイト達と異なる反応を見せたのも、いつものことだった。
「おめでとうAA11BC! 私達のクラスから、また卒業者が出るなんて誇らしいわ! 頑張ってね」
「……ありがとう、AA19EE。君も早く卒業できることを祈っているよ」
卒業者であるAA11BCに「おめでとう」の言葉を送った彼女――AA19EEは、はにかむような笑みを浮かべている。そこには嘘偽りなど全く見受けられず、彼女が本心からクラスメイトの門出を祝福していることが窺えた。
全くもって稀有な少女だ。
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