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ドームの外では砂嵐や大雨が相変わらずあるというのに、俺はそれを遠くの風景のように見ているだけ。たまに吹き飛んでくるゴミでやられてしまうドームの壁は、自然と直る素材で出来ているという。虫のような機械はそれの補助で、直ったところをさらに強固にするためにいるのだと。
どこにでも住んでいいと言われたから、管理室に住むことにした。料理が欲しいと注文を出すように完成形のベッドを運んでもらうことは出来なかったが、圧縮されたマットレスと組み立て式のベッドを注文し届けてもらい、時間をかけて一人で作り上げた。
血が繋がってはいないが自分を作った父親のような彼を前にして、俺の造られていない魂は好きという気持ちを消さなかった。
今までのように映像の向こうの彼に自分の体を晒し、新しい刺激を貰い受ける。彼は、俺が新しくそれを学ぶように吸収し、体に馴染ませることを喜んだ。
「あ、奥、ほしいっ」
『まだ駄目だよ。傷つけないようにゆっくり慣らしてね』
女性体ではなく男性体のこの身で、彼を受け入れる。
「ぅんっ……ん」
四つん這いになり、男性器を模した道具を自分の手で動かす。先端だけを中に入れ、円を描く。少し深くまで押し込んではまた引き抜き、浅いところだけを行き来する。
ここに来てから何度もした行為に慣れ、広げた体の奥へ早く入れたいのに彼がダメだという。それに素直に従い、ゆっくりと時間をかけて自分の穴を広げる。
与えてもらった道具は、以前の彼の形だという。映像の向こうの彼だって、昔の姿。何日経とうとも何年経とうともその姿に変わりはない。機械が機械を作り、整備し、この町には未だに誰もいないまま。
『他の人を好きになったら、僕のことなんか忘れてしまうんだよ』
自分を忘れろと彼は言った。この国ではないどこかにいる、俺と同じような人間。もしくは、これから作られていく新しい人間を好きになって、と。
教えられずとも"好き"を知った俺に、彼は期待をしている。
この体をこうして快楽に慣らすのだって、彼の望むままなのかもしれない。こうして他人を受け入れたいと強く望み続けるうちに、触れない彼ではない生身を求めるようになる。
彼を模したものではない、本物を。
[終わり]
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