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その日以来、村人達はナミを避け
口も聞かなくなった
村人達が小さな丸木舟を作っていた
ナミは子供達と遊ぶ事さへ許され無かった
3日程経った頃、満月で大潮の夜を迎えた
「ナミは寝たな?」
「あぁ、みんな寝ただ、あんたオラ嫌じゃ
ナミを守ってやれんか?逃げよう」
「馬鹿言うでねえだ!
逃げたりしたら、家を焼かれ皆殺しにされるだぞ
掟を忘れたんか?」
キネは何も言え無かった
誰もこの村を出た事が無い、外がどんな所かも
知らないのだから.....
「そろそろ、長が迎えに来るだな
キネは外に出るでねえぞ」
キネは頷いた
眠るナミを抱き締め、泣いていた
飲まされた薬で、グッスリと眠るナミや兄妹達も
目覚めなかった
暫くすると、長と村人達の男だけが迎えに来た
浜辺に連れて行くのだ、儀式には女は出る事は
許されないのだ
村人達が松明を持ち先頭と後尾を歩く
ナミは与助に背負われ、長の後に付いて行った
戸を閉めキネは声を殺して泣いていた
浜辺にはコウが石神様を台に置き、大小の器や盃斧、紐が並べられていた
松明が数本立てられ、数人の男達と待っていた
その中に、情事を見られた美濃吉もいた
丸木舟もその傍に置いてある
この儀式はコウと美濃吉が、ナミに見られた
口封じの為の儀式だったのだ
村人達に二人の仲を悟られ無い為に、怨霊として村人達を煽っていたのだ
コウの言葉は、石神様のお告げとして疑う者は
いないのだ、独自の信仰で洗脳されているのだろう
そこにナミが連れて来られた
砂浜に莚が敷かれ、ナミは寝かされた
村人達はナミの周りに座らせると
コウは村人達全員に、大きな器に入った清めの
飲み物を回し飲みさせた
コウは石神様に祈りを捧げながら、歪な石を少し削り粉にし器に入れ、何かの根を煮出した黒い汁を混ぜた器を持ち、石神様に祈りを始めた
暫くすると、村人達は妙に陽気な気分になり
立ち上がり踊り出した
飲み物は麻薬の一種なのだろう
「誰かナミの怨霊を追い出さねばならんが
度胸のある者はおるか?」
「オラがするだ」
「いや、それはオラがしてえ」
「ならば2人に頼もうかの」
そう言うとナタを一人に手渡した
「これでナミの両腕と両足を切り落とせ」
言われるまま三吉がナタを振り上げた
「ぎゃあぁ~」
ナミは余りの痛さに目覚めた
村人達は異様な目付きである、父親も笑いながら
見ていた
「おっ父!助けてけろ、みんなやめれ~」
ナミの両腕両足は、腹の上に置かれ
腕から流れる血がボトリポトリと莚に流れた
尽かさずコウは器の中に、その血を数滴入れ混ぜ
ドロッとした液体をナミに飲ませる
当然ナミは暴れた
村人達はナミの体を抑え付け、無理矢理飲ませた
コウは留めとして村人達に言い放った
「石神様が、ナミの血を清めたんじゃ!
これでいいんじゃ」
「オラが何で...こんな......」
ナミは意識が朦朧としてきた
村人達はナミの手足を縛り、丸木舟に乗せ
海に押し出した
「ナミは泳ぎが得意じゃ、逃げたりしては石神様が怒りなさるでな」
「ナミ、帰って来るんじゃねえぞ〜」
父親の声だった、楽しそうに笑っていた.....
薄れる意識の中でナミは村人達の笑い声を聞いていた
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