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ナミの乗せられた丸太舟は、大潮が沖へと
運んで行く
それはまるで、小さな棺の様だった
丸太舟に乗せられたナミは周りは見えない
手足を縛られ、舟の中は血だらけになっていた
見えるのは満月だけだ
「親も村人達も、絶対許さねぇ!
恨めしい....痛え....痛え......」
ナミは泣きながら、満月を見て唇を噛み締めた
「お前はこんな酷い事をされたのか.....」
「どれ程怖く惨めだったか、分かるだろう?
その後私に何が起きたのか分からない
何故こんな姿になったのかも......
只、暖かい光に包まれた迄は覚えている
気がついた時には、手も足も繋がっていた
傷は残っているがな
名前もナミから雫に変えた
親のつけた名前を捨てたかったのだ」
潤は言葉を失った
「大人を信じられない訳が分かったか?
子供達は、みんなそう言う目に合って
この島に来たのだ
ある子は白い飯が食えると言われ騙され
ある子は災害が起きた石神様のお告げと
ある子は流行り病を起こしたと言われ
ある子は口減らしでと、何か起きる度に
みんなココに送られて来た
みんな両手両足を切られ
何人もが丸木舟に乗せられて.....
送られて来る子の歳はどんどん、低くなって来た
赤子迄もいた」
「赤ちゃん迄!
他の子供達の傷は雫が治したのか?」
「そうだ、月雫には魔力があるのだ
新月の光と共に雫が、紅い石を伝い出来た泉に
体を浸けると、切られた手足が治り生命迄も
復活する大切な泉なのだ
只、赤子だけは救え無かった
赤子は無垢なので泉に浸けてやり 、抱くと
私の腕の中で消えてしまった......
子供らには怨みと呪いしか記憶になかった
名前も私が付けてやったのだ」
「月雫にはそんな力があるのか?
信じられない
この紅い石には、意味があるのか?」
「大人の体の全てを消し去り 、紅い石がその血を
吸い尽くすのだ
吸血石と呼ばれ地球に無い石だ
「地球に無いって!お前らは宇宙人なのか?」
「そうかも知れない......
水晶も地球の水晶では無い
子供らを月雫の泉に体を浸けると
その子らに与えられた水晶が、魔石となり
魔力が与えれるのだ
水晶の色が違うのはその為だ
我らの持つ力は、紅い石と水晶で出来ている
時を止め、我らが大人にならない為に.....
黒い石は島を守る為の大事な石なのだ」
「黒い石は人間の血や骨を溶かし、その血を
吸い尽くすして出来たのが、紅い石と言うのか?
どれだけの人間の血なんだ
それも大人だけ、凄い数あるじゃないか!」
「我らはココで静かに
暮らしたいだけで良かったのだ
大人が来なければこんな事はせずに
済むものを.....」
「小さな島なのに、何故こんなにも広い?
それに鳥や虫1匹居ないのは何故だ」
雫は笑いながら潤を見た
「島は無限に広がるのだ、月がある限りな
鳥や魚達は強い磁場のせいで近ずけ無いのだ」
「無限の島?あの月にそんな力があるのか
太陽の方が、パワーがありそうだけどな」
「お前に月の何が分かる、ココに来てから
月雫の泉に体を浸すと、全てを教えてくれるのだ
我らは文字も書けぬ、ただの人間だった
今では何でも知っている
未来迄もな」
「お前達は未来が見えるのか?」
「我らにしか分からないだろう
かつては火星も地球の様だったが.....
生ある者は、誰にも死が必ず訪れるものだ
この地球もそうだ」
「地球が死ぬ?」
「そうだ、近い将来な
それも大人達が引き起こした事だ
あまりにも愚か過ぎて呆れる程だ」
「地球が無くなると、お前らも死ぬじゃないか?」
「我らは既に次の地球に移る準備は出来ている」
「他にも地球があるのか?」
「当然だ、遠い銀河を幾つも超えるがな
今の地球の技術では無理だが
我らは島ごと瞬時に行けるのだ」
「信じられない......島が乗り物なのか!
今、俺らの来た所はどうなってるんだ?」
雫は潤の額に人差し指をポンと当てた
すると頭の中に又映像が見えた
「あ、米子婆さんだ」
米子は掃除をしていると、壁に貼られた
1枚の写真がハラリ落ちた
その写真は俺達がボートに乗る前の
米子婆さんが撮った写真だった
「あれからもう1年も経つんじゃな
あの日、若い子らがボートで行った切り
戻らんかった
いい子達じゃったのに.....
突然の嵐で転覆事故にあってしもうて
捜査も打ち切られ遺体すら見つからなんだ
可哀想にのう」
米子は壁に貼り、写真に手を合わせた
みんなの笑顔の写真だった
「俺達の写真.....あの日嵐なんか無かった
月を見たし、それにココに来たのは昨日の筈だ
夜が明けたのも見た.....握り飯を1回食べただけだ
1年も経ってたなんて、餓死する筈じゃねぇか」
そこに若者達がトキワ荘にやった来た
「いらっしゃいまし〜疲れたじゃろう
部屋に案内しますで」
「あいつら此処に来るつもりなのか?
来るな!来たら死ぬぞ!来るなぁ」
「もう遅い!明日には来るだろう
ココは時が止まっていると言ったでは無いか
腹が減らんのが、そんなに不思議か?
お前達は今日着いたばかりだぞ」
「今日?そんな馬鹿な..... 朝日を見たぞ!」
「お前達が来た時の、朝日を見ていただけだ」
「ループしてるって事なのか?」
「そうだ、髪も爪も伸びているか?」
俺は、爪も髪も髭も伸びていないのに
気づいて言葉を失った
「そんな...1年も経ってたなんて.....」
「分かったか?
此処は時間が止まっていると、何度も言ったぞ
そろそろ、お前も行かねばならん
みんな目覚めなさい」
大勢の子供達が上から、次々と舞い降りて来た
「ま、待ってくれ!2には何か意味があるのか?」
「2? 偶数は憎しみの数だ、ココに居る子供達は
みんな奇数しかいない3、5、7、9、11と
初潮前迄の子供達だけしかいない」
「洞窟内に水晶は2つしか無かったぞ」
「3つあるぞ、先に来た大人を
ココに連れて来た時は、水晶は見えぬだけだ
既に元に戻っている」
「滝の水は何処から流れて来てるんだ
壁があるのに雨は降らねえだろう?」
「大人が入らなければ壁は消え雨は降る
お前達が来た時は嵐だった」
「嵐?いつだ」
「今日の夕暮れだ、お前達が洞穴にいた頃だ」
「ヒカリゴケは何故あんなに光が強いんだ?」
「月草だ 地球には無い
磁場で発電し滝の力で増幅して原動力と
なっているのだ
さあ、もういいだろう?」
雫は黒水晶を持った子に、コックリと頷いた
「これで仲間の所さ行けるだ」
「ま、待てくれ、まだ聞きたい事が.....」
黒水晶を持った子が、俺の首にチクリと刺した
「子らよ、黒い石を浜辺に運ぶのだ
紅い石が見えぬと、魔力が落ちてしまうぞ」
子供達が両手を上げると、黒い石が一斉に
宙に浮きザアーっと洞窟の中を通り
浜辺の方に飛んで行く
その中には蓮や竜也、彩香、美紀の石もあった
「あぁ~蓮達が......」
「オメエももうすぐ行くだよ
あれ?こいつ目から水が出てる」
「涙と言うものだ、我らには無い物だ」
「へえ〜面白れえな、きゃははは」
「みんな石積みしに行くだか?」
「行く行く〜」
子供達はス〜と浮き上がり浜辺に行って
しまった
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