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「伊吹ちゃん、帰りにどう?」
定時を過ぎた頃、同期の誠也くんが外回りを終えて帰ってきた。誠也くんは、見た目も性格も悪くない。でも、年齢のわりにはおっちゃん……と言うか。今も、手でコップの形を作って、クッとお酒を飲むジェスチャーで私を誘った。
「いいよ」
「ほな、あそこの中華料理屋で」
それだけ言うと、オフィス内に響き渡るような元気な声で「お疲れ様でしたー」と言って、オフィスを後にした。
「誠也くん、見た目はいいのにおっちゃんみたいやな」
そう言いながら、栗栖課長が私の肩をポンと叩いた。
「若い女の子を誘うのに、近所の中華料理屋なんて、センスないなぁ」
おしゃれな栗栖課長なら、きっと素敵なお店をチョイスされるんでしょうけれど。誠也くんだから、仕方がない。
「でも、私、あの中華料理屋さんの皿うどんが大好きなんで」
パソコンの電源をオフにしながら、笑顔を見せた。
「お疲れ様でした」
誠也くんを悪く言われるのは、あまりよろこばしいことではない。
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