奇妙な客

2/5
前へ
/5ページ
次へ
「まず、なぜここに来たのかと言いますと…  単に興味があったからなんですよ。」 「興味?」 「はい…ここに来たのは初めてだし、  私を泊めてくれた人もここを推薦してまし  たので…」 (……平行世界からの客なのかもな…) 最近、この世界とはかけ離れたところに、しかし親密な関係をもった、『並行世界』というものが発見された。 私はそういうのには疎い。 頭がこんがらがる。 だが、この人の関係者が私を推薦するのはこういう職業柄だからだろうな。 「この世界に来たのは初めて、ということで  すか?」 「そうともいえますね…  何故かはわかんないけどここにいた感じで  す」 「来た経緯を詳しく聞かせてくれません  か?」  もう一度いうが、私は並行世界なんて全くご存知ない。  そういう話は学者かそこらへんの隣人にするほうが得策だ。  だが、自分も『並行世界』というものを知りたいのだ。  つい最近までファンタジーの領域だった『並行世界』がついに現実の領域と化したのだ。  興味を持たない人なんてまずいない。  それはテレビとかスマホとかを見ない自分も例外ではなかった 「そうですね…それは一週間ほど前のことで  した…」  彼はヨーロッパに住む医学生であった。  当時の中世ヨーロッパでは黒死病が流行っていた。  彼の周りでは次々に人が死んでいき、 彼はそれを眺めることしかできなかった。  そんな自分が嫌だったらしい。  一人でも多くの人を救いたかった。  だから、彼は医者になりたかった。  ある日、目が覚めると、外は明るかった。  地面には死体が一つも転がっていなかった。  彼は不審に思い、外に出て、町に行った。  昨日の風景とは違っていた。  人々は皆健康で、死体なんてどこにもなかった。  街の人に黒死病について聞いても、首を傾げていた。  ここはヨーロッパじゃない。  彼はやっと気づき、おそるおそる町の名前を聞いてみた。  町の名前ははっきりと覚えていない。  でも、ヨーロッパでないことと、 違う言語であることはわかった。  幸い、自分はアメリカ英語を知っていて、その言語と近かったので、ある程度の会話はできた。  そして、町の人に匿ってもらい、食事と寝床をもらった。  そこで過ごしてから3日経った頃、自分の職柄を告げた。  医学生と聞いて、 彼らはここを推薦したのだ。 ここで、良い大学を探してもらうために。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加