0人が本棚に入れています
本棚に追加
一時間ほど歩いたあと、謎の建物についた。
真っ白い建物で、ただの立方体のようにも見えた。
「えっと…本当にここで合ってるんです
か?」
「勿論。」
更に進んでいったが、表面はツルツルで、入るところすら見つからない。
狐の仮面の男がその建物に触れると、
さっきまで何の凹凸もなかった表面に穴が空いた。
彼は躊躇わずそこに進んでいった。
もう一人もその人についていった。
中には何もなかった。
比喩表現じゃなくて、本当に何もない。
真ん中に手術台があるのみだ。
「君には、ここで手術を行ってもらう」
「しゅ…手術!?」
とんでもないという顔をした
「私はまだ医大生です
当然、手術などやったことがありません」
「習うより慣れろだ。
手術なんて習うだけじゃできるわけがな
い」
気が付くと、手術台には
一人の男が横たわっていた。
彼はこのままだと、もうすぐ死ぬ。
きっと、黒死病にかかってるのだろう。
「君はわかってるだろうが、彼は黒死病で苦
しんでいる。
手術時には、この手袋を着用。
手術内容は…そうだな…
心臓にこの薬を注射するだけでいい。」
「えっと…その薬はなんですか?」
「チョコレートとライターから作った特効薬
だよ」
「そんなの効くわけないだろ!」
「……君は錬金術というものを知らないよう
だな」
「……聞いたことはありますが…」
「まあいい。
この特効薬を使ってその患者を治すのか
それとも、何もせず、その患者の死を待つ
のか」
医大生の顔が歪んだ
「私が見るからにこの患者はあと数十分も生
きられない。
どうするんだい?」
医大生の顔は更に歪んだ。
「………
やります…」
「はい。これが特効薬だ」
今、手術台に乗っているのは、
医大生の父だった。
だから、絶対に救ってやりたかったし、
絶対に自らの手で殺したくなかった。
手袋をはめた息子は父に触れた。
まだ、かすかに動いていた。
メスを入れ、切開した。
特効薬だと言われたものを心臓に注射し
た。
切開した部分を縫った。
自分の最も恐れていた時間はあっけなく終わった。
最初のコメントを投稿しよう!