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畳ピザは、その名の通り畳1畳ほどの面積を持つ、バカが作ったピザである。
バカが開いたピザ屋にバカな客が集い、10人くらいのグループで食べる、サイズ以外に目立った特徴の無いピザだ。
たまにバカが1人や2人で食べようと挑戦し、敗れ、大量のフードロスを発生させる、時代に逆行したバカなピザ。
そのピザを自転車で配達しろと言い出した俺のバイト先もバカだし、不満を抱えて従う俺もバカ。
人類にはバカしかいない。
バカなピザを頼んだバカの家についたバカな俺は呼鈴を鳴らし、バカな客が出てくるのを待つ。
「ちゃーす、オーバーイーツっす」
「はいはーい……ってうわ、デカ!!」
そりゃデカいわ。クソ重いし。
「あっくーん! ヨウくーん!
ピザ届いた! 運ぶの手伝ってー!」
「はいよー、ってデカいな!」
「何だこれデケェ!!」
料金は注文時に支払われているので、俺の仕事は客に飯を届け、端末にサインをもらうことまでだ。
「ありがとうござっした、またお願いしゃーす」
会社に完了報告を送信し、客に頭を下げてその場を離れる。
後は次の指示が出るまで待機。事務所などはなく、エリア内ですぐ動ける場所なら自由にしていい。
うちの会社の場合、配達件数の歩合に加え、この待機時間にも時給は発生する。
デカ盛りを頼む客はそこまで多くはないので、普段は楽なもんだ。
季節イベントの日にはパーティメニューを頼む客も多いから結構な激務だが、半年単位の契約なので、楽な時期だけ働くことはできない。
契約期間中に辞めると違約金が発生する。
ニャロン、と、バイト用のアプリが着信音を鳴らした。
「あーあ、もう休憩終わりかよ」
次の受取場所はケーキ屋。
ケーキ屋ということは、ケーキだ。
当然ながらデカいケーキ。
嫌な予感を胸に抱き、俺はその店に向かった。
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