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あなたの名前
彼女がこの家に来たのは、冬頃だった。
システムを起動した彼女の目にまず映ったのは、
2階建ての一般的な庭付きの一軒家だった。
「オォ、ようやく来たか。
君が来るのを待っていたよ」
玄関から四角い眼鏡の男性が出てきた。
がっしりとした体つきで、ニカッと見せた白い歯が印象的だった。
「本日は私『HR‐1156』をお買い上げ下さり
誠にありがとうございます」
お辞儀をするHR‐1156に合わせて、男性もお辞儀を返す。
礼儀正しく、悪い印象を与えない。
「さぁ、家に入ってくれ。
家族も君が来るのを今か今かと待っているんだ」
そう急かされ、彼女はその家の玄関をくぐった。
中は程良い明るさの照明で照らされており、
玄関にはサボテンがちょこんと隅に置いてある。
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