10人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
蟹江は話を続けた。
「母の遺体は翌日帰って来た。それから納棺師の手で母が生前気に入っていた紫のドレスに着替えさせられるのを、私は隠れて見ていたんだ。私はその時見たよ、母の胸から腹にかけて縫い合わされたメスの跡を。それと母の髪をセットする時に、額の生え際に沿って横に走る縫い跡もあった。頭蓋骨を切った後だ。その時の私はすごく腹が立った。病死だと分かっているのに腹を切り裂き頭蓋骨を開けて、死者を冒涜する必要はないんじゃないかと」
「お気の毒だと思いますけど、解剖しないと病死だとは分からなかったんじゃないですか」
「私には分かっていたよ」
「十歳の先生にですか」
「ああ警察が来る前に母の声を聞いたからね。さっき言ったでしょ。死者の声を聞いたって」
「え……」
これはやばい。
間違いなく心霊特集行きだ。
最初のコメントを投稿しよう!