死体は語る

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「十歳の春。私は春にありがちな心弾むような気持ちで学校から家に帰ったんだ」 「はい」 「そうしたらね、家の中が水を打ったみたいに静かなんだよ。いつもだったらカチャカチャと母が台所やリビングで何かしらやっている音がするなのだがね。それがその日はシーンと無音なのさ。私は何だか不安になって二階の両親の部屋に駆け上がった。そして見つけたんだよ母を。苦しそうに目を剥いて倒れてる母を……口から泡を吹いていたよ」 「それは何とも……」 「そう。でもその時はまだ死んでいるなんて思わなかったけどね」 「で、先生が救急車をお呼びになった」 「いや、 私はすぐに別棟の工房にいる父に知らせたんだ」 「そうですか」 「その後……救急車は来たのは来たが、母を連れて行かずに代わりに警察が来たよ。ご存知の通り家で死んだら変死扱いだからね」 「そうなりますね」  早くもこの辺りで予定の三十分を過ぎていた。
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