#04. ぎゅっとして抱きしめて R

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 そうして、彼女は、姫抱きで運ばれ、髪にドライヤーをかけられ、ホールケーキでお祝いをし(荒西がちゃんとバースデーソングを歌ってくれた)、それから一緒に……布団に入っている。  シングルの小さい布団だ。荒西とからだを寄せ合って眠る。……課長職でイケメンであるから、きっと豪華なマンションに住んでいるのかな、と予想していたが、つつましいマンションだった。そういうところに親近感が持てる。部屋も、きちんと片付いていて、部屋が八畳くらいとやや広めで居心地がいい。勉強机があってボールペンが大量に置かれているあたりは流石だと思った。花緒里たちはボールペンを製造販売する会社で働いている。職業柄、と趣味も込みなのだろう。あの収集癖は。  異性とふたりでベッドインなんて勿論初めての経験である。花緒里は思い切って顔を傾けてみた。荒西のほうへと。熱い……息がかかる。互いの息がかかるほどの距離にふたりはいる。 「良治、……あの」勇気を出して彼女は言ってみた。「あたしを、……癒してくれる?」
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