#05. ため息ひとつで恋をした。【最終話】

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「『ママレード・ボーイ』って……どちらかと言えばおれら世代の漫画だと思うけれど?」 「や、映画をきっかけに、それで原作を読みました。続編も読みましたよ」 「……ジェネレーションギャップ……」額に手をやるとふぅ、とまた例のセクシーなため息を吐く。「おれはリアタイでアニメ見てた世代なんだよ……」  小さく花緒里は笑った。荒西を解放すると、「……あたしが良治を好きになったの、そのため息がきっかけだったんだよね……」  再び恋人繋ぎをして歩き出す。外の空気は勿論寒いが、二人は全然寒くもなんともない。「……ため息って? ああ……イブにぼっちを示唆したアレか……」 「はい。あれがきっかけです」と花緒里は荒西に向き直り、「あなたの素敵なため息がきっかけで、あたし……恋をしました。責任、とってください」 「勿論だよ」す、と王子様はお姫様のまえで跪くと、迷わず手の甲にキスをした。「一生……幸せにするから」 「ありがとう。……あ、雪……」  立ち上がった荒西とからだを寄せ合い、東京の街に降り始める初雪を愛でる。――幸せ。それが彼女の実感だった。  もう……寂しさにふるえる自分はいない。
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