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硬直した花緒里の胸中を理解したのか、「あ……いまのため息に特別な意味はありません」と恥ずかし気に補足するさまに、また、怒涛のような『きゅん』の嵐が花緒里の胸に押し寄せる。特別な意味は……特別なイミハ……。
「あはい。……内緒にしておきます」ひとまず、花緒里は小さく頭を下げた。自分の思考がダダ洩れになっていないことを願うばかりである。「それでは、……失礼します」
「うん。お疲れ様」
何事もなかったかのように笑う荒西を見て花緒里は流石だと思った。この時点で、彼女はまだ、自身が本格的な恋に落ちていたことに気づいていなかった。気づくにはまだ、七時間の時を待たねばならない。
* * *
(あれ。既読つかないな……)
お昼休み中、花緒里は、自席にて、不可思議に思ってまた携帯を操作する。花緒里が見ているのは自身が登録している婚活アプリの画面だ。最近やり取りをして盛り上がった『ケンスケ』なる男とは、今夜、初めて会う約束をしている。……それで場所と時間をどこにするのか、確認のメッセを送ったのだが。朝八時半に送ったのにいまだケンスケが読んでいない様子だ。すると、
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