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ぽん、と既読がついたと思ったら即座にメッセージが届いた。それは――彼女の予想もつかない内容だった。
『ずっと言おうと思ってたんだけど』
『三十で経験なしってやっぱ無理』
『ブロ解します』
* * *
――つい、今朝がたまで浮かれていた自分が、嘘だったみたいだ。
花緒里は、一人、残業をしていた。この広いフロアにいるのはきっと自分だけだ、と花緒里は思う。――クリスマスイブが特別な日だなんて誰が決めたのだろう。それでも――自分は、この日を楽しみにしていたのだ。ほんの、半日前までの自分が。
みな、家族や友達、恋人と予定があるのだろう。ほとんどの人間が定時で帰って行った。勿論、花緒里は、同僚の残っていた業務も積極的に引き受けた。……今夜は、勝負服で来たのに。勝負下着も買った準備万端で来た自分が……馬鹿みたいだ。
いけない。と彼女は思う。歯を食いしばるも――涙が、あふれた。が、こころを殺し、タイピングを続ける。そんな、彼女に。
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