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(受け入れてしまった…)
と言うか、相談と言いながらあの人断る隙を与えなかったよね?
Secret baseから徒歩五分、1LDKの賃貸マンションがゆこの部屋だ。
外見は少しくたびれているが、中はリノベーションしてあり柔らか木の香りがする、ゆこの城である。
買うまで三回も家具屋に足を運んで決めた、薄いオレンジの二人がけのソファーにはゆこの自作のキルトが掛けられている。
そのソファーの上、ゆこは何度目かのため息をついていた。
料理を作るのは好きだ、なんにせよ何かを作るのが好きなのだ。
けれど毎日誰かに弁当を作るとなると気が重い。
残り物に一品足して、などと手抜きで済ませる自分のそれとは訳が違う。
何より、相手の好みを知らないと言うのが難しい。
あっという間にカードを渡し、要件だけ伝えて去って行った村沢に、自分は誰に弁当を作るのかと聞く暇も無かったのだ。
カードを初対面の自分に渡して大丈夫なのか、それも聞けなかったが。
ゆこが派手に買い物したらどうするつもりなのだろうか。
(明日は唐揚げ)
んーと唸ったゆこは、ハッと閃いた。
さっと立ち上がるとしばらく開けていなかったキャビネットを漁る。
「あった!」
ゆこの手には、可愛らしいキャラクターが描かれた小さなメモパットが握られていた。
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