お弁当とメモ

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翌日、ゆこは唐揚げ弁当を作った。 彩にタコさんウィンナーも入れた。 唐揚げをリクエストする位だ、タコさん位いいだろう。 そして、昨日のメモの最初のページに書き込みをする。 『美味しく召し上がって下さりありがとうございます 明日は何かご希望はありますか? リクエストを頂けると助かります。 ーSecret base 利川』 しっかりとボールペンまで添えてあのお辞儀さんに手渡した。 今回は帰って来たのもお辞儀さんだった。 一時間ほどして戻った紙袋をドキドキしながら開けてみる。 ちゃんとメモは一番上に入っていた。 最初のページに少し癖のある、けれど読みやすい文字で簡潔な一行。 『生姜焼きときんぴら』 「お肉派なのね…そしてきんぴら好き…」 ふふっ、思わず漏れた声は弾んでいた。 次の日も、その次の日も返事は簡素な一行だけだった。 リクエストは全て肉で。 そしてもれなくきんぴらもセットだ。 毎回空で帰ってくるお弁当箱が嬉しかった。 綺麗に洗って返してくれる。 嬉しくなったゆこはいつものメモに書いてみた。 『いつもありがとうございます リクエストとても助かります そろそろ、お魚や野菜が恋しくありませんか? ーSecret base 利川 ゆこ』 必要の無いフルネームを書き込んだのは、きっと無意識だ。 返事がきた。 『肉巻きときんぴら。 肉巻きの中の野菜は食べる』 返事が二行になっていた。 けれどゆこが驚いたのはそこではなかった。 書いてあったのだ、その下に。 『霧島』と。
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