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山の中で、街が死んでいた。
発電所、浄水場、ゴミ処理場、農業区画まで用意されている、そこ一つで完結している孤立都市は、しかし今や、何一つとして機能していなかった。
居住区の窓は残らず割れ、壁や、工業区域を封鎖している金網は、蔦が這い廻るための支柱になり果て、道路のコンクリートが隆起し、巨大な気の根や雑草があちこちから飛び出す様は、おおよそ、十年やそこらの時で作られる光景ではなかった。
緩やかな時間の中に置いていかれた街の中に、動く影はない。
街に入ろうとする者も、街から出ようとする者も、誰もいない。
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