一、北の地にて 1

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 それに従い、携帯電話の通話履歴やメールの発信履歴が調べられた。  「ついさっき、メールをひとつ発信している。」  「だれにだ?」  「瀬上明(せのうえあきら)とある。」  影が持つ携帯の液晶画面にはっきりと文字が表示されていた。  “バレた、逃げろ”と。  「よし、お前は後始末をしろ。俺たちはその男を追う。」  携帯を受け取ると二つの影は音もなく消え、残ったひとりは横たわる男を肩に担ぎあげると、これも音もなく消えた。  瀬上明はアパートの自室で逃げ出す準備に追われていた。  つい先ほど届いたメール。  協力者があのようなメールを送ってくるのは初めてである。それゆえに危険な予感がした。  最小限持ち出す物をリュックに入れ、それを背負うと、瀬上は部屋を出ようと玄関のドアノブに手をかけた。  そのとき、外から階段の軋む音がかすかにした。  瀬上の背筋に危険を知らせる冷たいものが流れた。  玄関から離れ、反対側の窓に移動する。  ガラスサッシをあけると、外は闇の世界だ。  街灯は遠く離れ、二階である瀬上の部屋からは灯りらしいものは見えない。  窓を跨いだとき、玄関のドアノブを廻す音がした。
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