3人が本棚に入れています
本棚に追加
それに従い、携帯電話の通話履歴やメールの発信履歴が調べられた。
「ついさっき、メールをひとつ発信している。」
「だれにだ?」
「瀬上明とある。」
影が持つ携帯の液晶画面にはっきりと文字が表示されていた。
“バレた、逃げろ”と。
「よし、お前は後始末をしろ。俺たちはその男を追う。」
携帯を受け取ると二つの影は音もなく消え、残ったひとりは横たわる男を肩に担ぎあげると、これも音もなく消えた。
瀬上明はアパートの自室で逃げ出す準備に追われていた。
つい先ほど届いたメール。
協力者があのようなメールを送ってくるのは初めてである。それゆえに危険な予感がした。
最小限持ち出す物をリュックに入れ、それを背負うと、瀬上は部屋を出ようと玄関のドアノブに手をかけた。
そのとき、外から階段の軋む音がかすかにした。
瀬上の背筋に危険を知らせる冷たいものが流れた。
玄関から離れ、反対側の窓に移動する。
ガラスサッシをあけると、外は闇の世界だ。
街灯は遠く離れ、二階である瀬上の部屋からは灯りらしいものは見えない。
窓を跨いだとき、玄関のドアノブを廻す音がした。
最初のコメントを投稿しよう!