3人が本棚に入れています
本棚に追加
それをきっかけに、瀬上は窓から外へ飛び降りた。
地面に降りた衝撃を全身で感じながら、急いで駆け出した時、目の前に黒い大きな影が立ちはだかった。
とっさにリュックに手をかけ、腕から抜くと、それを振り回す。
影がその攻撃に怯んだ隙に、瀬上は影の脇を通り過ぎ、捕まえようとする影に向って、リュックを投げつけた。
リュックは見事に影の顔の部分に当たり、その動きを止めると、瀬上は全力で闇の路地へ駆けて行った。
影もその後を追ったが、路地に出たところで、自転車で走り去る瀬上の後姿を見ると、追うのをやめた。そこへもう一人の影が駆け寄ってきた。
「どうした。逃げられたのか?」
「自転車を用意していたようだ。あっという間に逃げていった。」
「やつの立ち寄りそうな所をしらみつぶしに当るんだ。皆に伝えろ。」
「了解した。」
暗闇の中で二つの影がそうやり取りすると、あっという間に消えていった。
そのころ、奈美は店のカウンターで小さな箱を玩んでいた。
「ねえ、リエちゃん、それなに?」
隣にいた若いアルバイトの娘が、少し酔った様子で奈美に話かけた。
最初のコメントを投稿しよう!