一、北の地にて 1

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 ルナは驚いた顔をして箱をしげしげと眺めた。  「そう、それ秘密箱といって、開け方にからくりがあるのよ。それ、知らないから中身が何かわからないの。」  そう言って奈美は、ルナから小箱を受け取ると苦笑いをした。  「開け方の書いた紙とか、瀬上ちゃん、くれなかったの?」  ママもあきれたような顔をして奈美に尋ねた。奈美はそれに首を横にふって答えた。  「瀬上ちゃん、肝心なところが抜けてるのよね。」  「そのリエちゃんの彼氏から連絡は?」  その言葉に奈美は軽くルナを睨んだ。  「ここんところないわ。」  「そう言えば最近、顔も見せないわね。」  「ネタでも追っかけてるんじゃあない。」  興味なさそうな顔をして奈美は、カウンターに頬杖をついた。  「そうだ。ママ、この間言ってたように、明日からお休みいただきますね。」  奈美はママに向ってすまなそうな顔で言った。  「わかってるわ。でも、3日でいいの?」  「ええ、用事をすませたらすぐ帰ってきますから。」  「あれ、リエちゃん、どっかへ行くの?」  ルナが目を丸くしながら奈美に聞いた。  「ちょっと用事でね。北海道までね。」
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