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「おーい、司(つかさ)あったぞ。」「やった、二人とも合格だな。 よろしくな!」
俺の名前は、久野江司(くのえつかさ)。 親友の中澤裕太(なかざわゆうた)と同じ大学を受験して見事合格となったわけです。 憧れの学生生活なのですが、私には1つクリアーしなければならない課題があるのです。
それは、小中高と通して1度も彼女が出来なかった、いやすみません見栄はりました、女性と普通に話をしたことすらないのです。 裕太は俺に任せろとかいうけど、はてさてどうなるやら。
「親しくなるなら、やはりサークルだろうな。 部活は堅苦しいし、マジなやつ多いから疲れるし。」
「ふーん、そんなものか」
俺は裕太の話を聞きながら裕太の以外ほとんど表示されないLINEに1の文字が浮かんでいるのに目をやった。
「裕太。横にいるんだからLINEじゃなくていいじゃん」と言うと、訝しげに
「LINE?なんのこと?」
「だってほら、LINE一件入ってるし。 あ、でも、、アイコンが違う? これ、誰だろ」
「ああ、それ小鳥遊涼子さん。 同じサークルの」
全く意味がわからない。 サークル? 小鳥遊?
「司連れてくとなかなか決まらないからさ。 昨日2人分申し込んできといた オカルト研究会。 で、小鳥遊さんは同じ1年生で入会希望者として知り合ったので、お前のLINEも教えておいた。」
「なに勝手なことしてるんだよ。 しかもオカルト研究会って。」
「まぁそう言うな。 これくらいがほどほどに緩くていいんだよ。 とりあえず研究所まで行くぞ」
「研究所なんてあるの?」
「そう呼んでるだけの、ほぼ物置だ。」「マジかよ。」
呆れながらも俺は裕太について行った。
「やぁ、小鳥遊さん。」と裕太が声をかけた先に彼女はいた。
「ひょっとして、あなたが久野江君?小鳥遊涼子です、よろしくね。」俺はただ頭を下げるだけで声も出なかった。
「小鳥遊さん、ごめん。 こいつ女性恐怖症なんだ。」俺の緊張は、裕太に言い返す声さえ出ないほどになっていた。
「そうなんだ。 まいいわ!いつか気が向いたら久野江君のこと教えてね。」
「は、、い、、」
「おおお、司返事できたねぇ。 小鳥遊さんは司の女神かもな。 もっと話しかけてあげてください。」
それから小鳥遊さんは俺の顔を見たら話しかけてきた。
彼女の故郷の話、何度か引っ越してせっかくできた友達との別れが悲しかった事、趣味の事を楽しそうに懐かしそうに話す彼女に、いつの間にか惹かれるようになっていき、相づちくらいはできるようになった。
「でも、私って変よね? 女のくせにオカルト研究会ってなんで?とかよく言われるし。」
「そんな事ないです。 誰が何をやっても自由だし。 他人から言われても堂々とやってる小鳥遊さんは素敵だと思います。」 つい、言ってしまった。
穴があったら入りたい。 顔が厚い。 すると急に手を握られた。
「嬉しい!そうよね。 ありがとう。」
心臓が飛び出して死ぬかと思った。
そこに裕太がやってきた
「なんだ? 急接近?」
「違う違う、、いやこれは、、」
「え!久野江君、私のこと好きって言ったじゃない。」「言ってない言ってない。」
「そんなに全力で否定しなくても。」
この時は余裕もなく、必死だった。 ただ、彼女の目がなんだか潤んでいたような気もしたが。
「じゃ、私の役目はここまでね。」と、小鳥遊さんは帰って行った。 一度も振り向くこともなく。
「小鳥遊さんもなかなかやるなぁ。 司が女子と喋るの初めて見たし。」
「なぁ、そのことだけどな、、」
「どうした?」
「あ、、うん。 なんでもない」
その後、小鳥遊さんともっと接近していくかと思いきや、俺は意識しすぎてサークルに行かずコンビニでのバイトばかりしていた。 雄太からのLINEは(おーい、サークルにも顔出せよ)とか来るが、どの顔下げていけるんだ。
その日は講義もない日だったが、昼から大学近くのコンビニでバイトがあるので学食に来て昼食を食べていたらスマホがブルっと震えLINEが来たことを教えた。
小鳥遊さんからのLINEだった、何かよくわからない文が長々と書かれている。なんだろうってのぞきこんでいたら、横の席に誰か座った。
まだ空いてるのになんで隣にすわるんだ?と見上げると
「た、か、な、し、さん。このLINEなに?」
「ごめんね、久野江君最近すぐ逃げちゃうから。 なんか私すごい悪いことしちゃったよね。誰だって苦手な事くらいあるのに。久野江君のためって大義名分使って、なんか揶揄っただけみたいになっちゃった。 いまさら、ごめんねと言ってもダメなのはわかってるけど。」
「気にしないでください。 元は俺が悪いんですから。 裕太も小鳥遊さんも俺のためにやってくれたんで。 ですから、また話してください。 俺も頑張って自分の事話せるようになりますから。」
「ありがとう。 もっと話そうね。 やだこのカレー、なんか眼鏡が曇ってきちゃった。」
カレーでも眼鏡が曇るんだ、知らなかった
「なぁ裕太。 最近なんかさぁ盗撮されてるっぽいんだ。」
「盗撮?なんだその面白そうなシチュエーション!」「変な関心持つなよ。」
「要は、俺に盗撮してる奴を見つけてほしいわけだな?」
「メンタリストか!」
その日の帰りの電車から捜索は始まった。
「司見つけたぞ」
「早!早すぎん?」
「この名探偵裕太様にかかればあっという間さ。 犯人はJK達だった。」
「なんでJKが? ってJKってなに?」
「女子高生だよ。 なんでも彼女らの間でマスクのイケメンが話題になってるらしくてな。 司もその1人だそうだ。 羨ましいな。 マスク様々だ。」
「ねぇ、なんの話ししてるの?」
「小鳥遊さんおはよう。 司の盗撮事件の話だよ。」「ダメだよ司君、犯罪だから。」
「違うよ。 司がJK達に盗撮されてるんだ。 マスクのイケメンだそうで。」
「うんうん、確かにイケメンよね。」
「JKの間でちょっとした人気だそうだ。」
「へぇ、そのうち告られたりしてね。」
小鳥遊さん、この間の反省はなんだったんですか、、
しかし、女性の感は鋭かった。
翌日、いつもの駅で電車を降りたらJK達に囲まれた。
「私と一緒に写真いいですか?」
俺は例の如く何も言えずいたら、さっさと撮影の準備は進み
「ありがとうございました。 できればLINEも。」
言われるがままにLINEも交換し、次の土曜日にデートらしい。 なにがなんだか、これがモテるって事なのか? 勝手に話が進むの?
「やるなぁ司。 デートまで?」
「うん、そういう事らしい。」
「らしいって、司君がLINE教えたんでしょ?デートもokしたんだよね?」
「突然すぎて。 いや、普段でも断り方もわからないし、スマホ勝手にいじっちゃうし。」
「いいじゃん、行ってこいよ!初デート。」
「おいおい、どこ行けばいいんだ? 何を話せば? 無理だよぉ。」
「がはは、告られた相手に振られてきやがれ!」
「裕太は鬼だ。」
「フラれろフラれろ。」
「小鳥遊さんまで。」
やっぱりあの反省は嘘だったんだ。
とはいえ、俺のために2人がプランを考えてくれた。
映画でも見に行くか遊園地あたり行って、帰りにカフェでお茶して終わりでいいだろうと。
遊園地はいいとしてカフェは何を話せばいいんだ?
小鳥遊さんとは少し話せるようになったけど、ほとんど小鳥遊さんが話題振ってくれるから話せるだけなんだよ。
「久野江君は、それでいいんだよ。 話できないなら聞いてやれば。」
なんて小鳥遊さんは言ってたけど、そんなものなのかな?
「司!おはよ。 っ、どうだったJKは?」
「とりあえず小鳥遊さんが言ってたように、相手と話を聞くようにして遊園地辺りまでは楽しそうだったんだけど。」
「だけど?」
「帰りにカフェ行ったあたりから、あまり喋らなくなってきて。 帰ってからLINEしても返事ないし。」
「どれ? ほんとだ全然既読つかないな。」
「俺あまりしゃべらないし、退屈だったんだろうな。悪いことしたかな。」
「司君は優しいね。」
「あ、小鳥遊さん聞いてたの?」
「やだ、後ろの席が私なの気づかなかったの? ショック。」
「ああああ、ごめん。 なんか自分の事で精一杯で、、」
「冗談よ でも、残念ね。 せっかく彼女できそうだったのに。」
「やはり、ダメかな?」
「500%無理ね。」
「そんなぁ、小鳥遊さんなんでそんなに嬉しそうなの。」
「ごめんごめん。 他人の不幸は蜜の味っていうじゃない。」
こんなに笑顔の小鳥遊さんは初めて見た。 いじられてるのに、可愛いってなるもんなんだな。
それからしばらくはバイトに力を入れて、シフトも増やしてもらった。
「司。 たまにはサークルにも来いよ。 先輩達にも色々いわれるんだよ。」
「わかったよ、行くから。」
研究所には小鳥遊さんがいた。
「裕太は?」
「裕太君?今日は用事があるって帰ったよ。」
「ええ、あいつが来いって言ったのに。」
「私が裕太君に頼んだの。」
「なんで?」
「なんでって、、」
「ちょっと裕太にLINEしてみる。」
「いいよ。 司君帰っても。 ハロウィンの用意とかもあるけど、1人でもできるし。」
「ハロウィンになにかやるの?」
「オカルト研究会だしね。 毎年恒例なんだって。」「そっか、じゃあ俺も手伝うよ。 1人じゃ大変だよね?」
「本当に?嬉しい。」と、またまた手を握られた。
小鳥遊さん喜びすぎだよ。 助っ人いれば嬉しいのはわかるけどさ。
「小鳥遊さん、明後日の買い出しだけど日にち変えられないかな?」
「都合悪くなったの?」
「最近入ったバイトの子なんだけど、一緒に遊びに行こうってしつこくて、、」
「断りきれなかったのね。」
「うん、ごめん。」
「いいよ、裕太君連れて行くから。」
「司!なんだバイトの子とデートしたんだって? いいなぁ、それで俺は買い出し付き合わされるし、なんか涼子ちゃん荒れてるし、大変だったんだぞ。」
「あちゃ、荒れてたのか。 だよな、約束したのに。」
「それで、どうだったんだ? 少しはうまくいったのか?」
「それがなぁ、また帰る頃にはあまり喋らなくなったんだよ。」
「進歩なしか。」
「で、これ見てくれ。」
「なになに?先輩には騙されました。 イケメンだと思っていたのに。 なんだこれ?」
「俺は何も騙した覚えはないけど。」
「だよな?」
「もうなんか、人が信じられないわ。」
「司君、またフラれちゃった?」
「がーん もう言わないで。 これなら、モテてない時のほうがよかった。」
「ごめんね。 司君つらいよね。」
「そうですよ。反省してください。」
「じゃ今フリーよね?今年のクリスマスパーティーに一緒に行ってくれない?」
「えっ?俺が小鳥遊さんと?」
「私とじゃいや?」
「嫌じゃないけど、小鳥遊さんならいくらでも相手がいるんじゃ?」
「やっぱり、嫌なんだ。」
「ええええ、えっと、行きます。行かせてください。」
「よかった。 断られないか心配だったけど、言えてよかった。」
小鳥遊さんのような可愛い子がなんで?
裕太も誘ったが「そんな野暮なことできるか。」との事だが、俺たちそんなんじゃないからね。 いやまぁ、俺は嫌じゃないけど。 むしろ嬉しいけど。
当日は駅前で待ち合わせをして会場に向かう。 今年はぼっちクリスマスは回避できた。 しかし、その考えが甘かった。 電車を降り改札を抜け駅の西口へ向かう。
腰を抜かしそうだった。 そこに立っていた小鳥遊さんは、ほとんどの男が振り返るくらいに輝いていた。
「司君こっち!」と、俺を見つけた小鳥遊さんは、無邪気に手を振る。 まぁ、今はマスクつけてるからなんとかなるのか? でも、マスクを取ったらどうなるのか、怖くて仕方なかった。
「小鳥遊さん、おはよう。 待ち合わせまでまだ大分時間あるけど。」
「司君とだから、嬉しくて家でじっとしてられなかったから。」
「…。」
頭がパニックで、なんて言えばいいのか。
「そういう司君も早いじゃない。 どうしてかな?」
体が膠着して動かない。 思考は全停止。
「さぁ、早く行こ。」と、俺の手を握り小鳥遊さんは歩き出した。
会場は、大学の中に3つの会場を作り、それぞれに特徴を持たせるというもので、どの会場もチケット制だ。
1つ目は立食のバイキング、2つ目はバンド演奏付きのカフェ、3つ目がダンス会場だ。
ようやく膠着も解けて、なんとなく落ち着いてきたので
「小鳥遊さん、とりあえずカフェでゆっくりと。」
「ダメよ、早く行かないとダンス会場一杯になってはいれなくなるよぉ。」
「ダ、、ダンス。」
「クリスマスパーティーといえばダンスじゃない?」
聞いてないよぉ〜。 俺、踊れないし、、、
「チークダンスも楽しみ!」
「オーマイガ!」
ダンスと言っていいのか?小鳥遊さんに振り回されもうフラフラ。
「小鳥遊さん、少し休も? いや、休ませて。」
「わかった。 じゃ、飲み物とってくるから席に座って待ってて。」
チケットに空いてる席の番号を係員が書き込むというシステムなので、席取りの心配もなく先にトイレをすませようと階段を上がりかけた時に、聞こえてきた。
「ねぇ、涼子。 合コン参加してよ。 涼子が参加してくれたらうちら最強じゃん?」
同じゼミの秋山みどりか?
「私合コンとか苦手だし。」
「まさか、今日一緒に来てるやつのことが好きとかじゃないよね? あいつマスクしてたらイケメンだけど、はずしたらかなり残念とか言う話だし。」
「そんなことないよ。 司君イケメンだよ。」
小鳥遊さんも、結局それか。
俺はテーブルに戻り、小鳥遊さんが戻るのを待った。 ほんとはもう逃げ帰りたかったけど、今まで仲良くしてくれたのは嬉しかったから、ちゃんとありがとうを言って帰りたかった。
「司君、おまたせ。 カプチーノにしちゃった。 一緒でいいよね?」
「うん、ありがとう。 小鳥遊さん、実はね。 言っておきたいことがあるんだ。」
「え、なになに。 プロポーズ? ドキドキ」
「茶化さないで聞いて。」
「ごめんなさい。」
「今まで仲良くしてくれて、本当に嬉しかった。俺を元気づけるためにパーティーにまで誘ってくれてありがとう。女子とこんなに仲良くできたの初めてだったし。」
「司君、何かあった? 変よ?」
「さっきトイレに行こうとした時に秋山さんと話してるの聞いちゃったんだ。 俺、全然イケメンじゃないし。」俺はマスクをとってみせた。
小鳥遊さんはキョトンとしながら見ていた。 そうか、ざんねんだよな。
「司君? ちょっと意味がわからないよ?」
「だから、マスク取ったらこんな感じだし。」
「そんなの知ってるよ? 今年の6月くらいまではマスクしてなかったし。」
「そういえば」
そこに裕太が女子数人を従えてやってきた。
「おいおい、どうした? いきなり夫婦喧嘩か?」
「違うよ。 でも夫婦喧嘩か、、裕太君いまのもう1回言って。」
「おう、何度でも言ってやろうか?」
「いや、裕太言わんでいい! まだ夫婦じゃないし。」「司君も、今のもう1回。 まだ、違うよね まだ。」「全然夫婦じゃないし。」
「もう、司君たら照れちゃって。 私のこと好きだって言ってくれたのに。」
「またそれ?言ってない。」
「言った!」
「言ってません。」
「司、覚えてないか? 小学校の4年の時転校して行った双葉涼子って。 コロコロしたまんまるな。」
「あぁ、いたな。 周りの女子からもからかわれてたっけ。 」
「そういうことだよ。」
「どういうこと?」
「両親が離婚して母がたの姓になったから、今は小鳥遊涼子なの。 わかった?司君。」
「えええ、小鳥遊さんが、あのコロコロ、、いやあの双葉さんなの?」
「そうだよ。もっと早くわかって欲しかったな。」
「彼女の母親と俺の母親が友達で、ずっと付き合いはあったんだ。」
「もっと早く教えてくれよ。 だけどさ、それと俺が好きと言ったってなんの関係があるんだよ。」
「小学校入ったばかりの時に、あいかわらずいじめられてた私を庇ってくれた時があって、皆んなが嫌いでも俺は好きでいてやるから泣くなって、ふだんあまり喋らないのに顔を真っ赤にして言ってくれたのは今でも覚えてるよ。」
「ごめん、覚えてないや。」
「うん、わかってる。 本気で好きだったわけでもないよね。 いつまでも引っ張ってごめん。 でも、いつまでも私の中ではイケメンの司君だから、彼女達に言ったのは、私の心からの気持ちだから、素敵な彼女みつけてね。」
「ほんとに覚えてないんだ。 小鳥遊さんごめんね。 その時の気持ちは覚えてないけど、今が好きじゃダメかな? もちろん見た目も可愛いけど、そんなことじゃなく本気で俺のことを心配してくれる人なんて、そんなに居るわけないし。 からかわれてても、何かわからないけど安心できるし、落ち着けるんだ。 だから、もしよかったら俺と付き合ってくれないかな?」
「45点。」
「おい、涼子ちゃん採点辛いな。司も相当覚悟決めて言ってるのに。」
「だって、頼まれなくてもついて行くわよ。 ついてこいって言って欲しいな。」
「えー、いや、、うーん ごほん 小鳥遊さん、つ、つ、ついてこい?」
「60点! 涼子で」
「涼子さん、、、ん、、涼子ついてこい。」
「はい!」
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