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「どういうことかしら」
「いや、莉冬ちゃんが何を気にしているのかと思っていたんだ。今の話を聞いてわかったよ。じゃあこうしよう。莉冬ちゃんがここにいる間は、わたしの洋館の管理人としての仕事を手伝ってもらうというのはどうだろう」
「管理人の仕事……?」
「難しいことではないよ。庭の手入れや、館内の掃除、住民の要望を聞くんだ。もしもその間に誰かの順番が来たら、わたしの権限で「まほらばの部屋」に入らせてあげるよ。……どうかな。これなら莉冬ちゃんにとっても悪い話ではないだろう」
「たしかに……」
労働という対価を払うことができるのなら、莉冬も無償で住まわせてもらうより気が楽だ。最初の給料が出たら家賃を払おう。いくらかはわからないが足りなければ次の住む場所が決まるまでに少しずつ返済すればいい。
それにまだ全貌がわかっていない「まほらばの部屋」に入ることができるチャンスがあるというのも莉冬の興味をひいた。現代にある摩訶不思議な部屋。本当に実在するのならこの目で見てみたいと思った。
「うん。わかった。そういうことなら、私、君塚さんのお手伝いするよ」
「交渉成立だね」
「お手柔らかにお願いします」
莉冬が茶目っ気たっぷりに言えば、君塚はフハッと笑って莉冬に右手を差し出した。君塚に出会ってから手を差し伸べられることが多くなったなと思いながら、莉冬はその手を握りかえした。
「君さーーん!花美さーーん!見て見て!!ついに!!俺の番が来た!!!」
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