20人が本棚に入れています
本棚に追加
ぷらぷらと、宛てもなく歩く。
雑貨が見たい、と先輩が言えば、近くの雑貨屋に立ち寄り、小腹がすけばパン屋に入った。
先輩は人目を気にせず手を繋いだりする。
私も特に、嫌がって離すことはしない。
「クリスマスさぁ、何か欲しいもの、ある?」
「あー…、もう、そんな時期ですねー…」
風が寒くて、繋いだ手の熱が温かくて。
私は無意識に、その手に少しだけ力を込めた。
「んー………、特に無いです。何でもいいですかねぇ~…。先輩は?」
「えー、後輩ちゃんからの愛かなぁ~」
「はいはーい」
初めて会った時。
まさか、先輩とこんな会話をするようになるなんて想像すらしていなかった。…それはまあ、当然かもしれない。
「………ねぇ、先輩」
「ん?何?」
また、繋いだ手につい、力を込めてしまう。
すると先輩も、同じだけ、強い力で握り返してきた。
「………私のこと、好きなんですか?」
「えっ?何?急に。好きだよ?そう言ってるじゃん」
「……」
全然分からない。
先輩の『好き』は、軽い。
はぁっと吐く溜め息は、まだ白く染まらない。これから、もっと寒くなると言うことだ。
何と無く、もしも先輩がアパートを出ていってしまったなら…、と想像して、身震いした。
それは、きっと、物凄く…………寒い。
先輩はひょっとして、『本当に』人を愛したことが無いのではないだろうか?と思った。
この人は、私のことを好きだ好きだと言うくせに、ふと、「他に好きな人が出来たから」と出ていってしまいそうなイメージがある。
分かりやすいのに、解らない。
…………どうしたら、繋ぎ止められるんだろう…。
そんな風に考えている自分に、自分で驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!