先輩が大体見かけ倒しだと言うことを、私だけが知っている

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それから暫くは、私は先輩の豹変ぶりに目を白黒させるしかなかったが、やがて、慣れと言うものはやってくる。 「後輩ちゃーん!これ、言ってたDVD!おすすめのやつ!」 「わぁっ!ありがとうございますっ!」 “世界が始まった日”のCDやDVDの貸し借りを通じて、私達はより一層仲良くなっていった。 借りたものを返す際に、おすすめのお菓子と簡単なメモをいれていれば、次にまた借りる時には先輩も同じようにおすすめのお菓子と簡単な手紙をくれた。 「後輩ちゃん!」 そう呼ばれるのが、くすぐったくて好きだった。 基本的に先輩は、どこかツーンとしていて、他を寄せ付けない印象を受ける。 実際は周りの人達をどう思っているのかはわからないけれど、昼休みは大体、一人で自分の席に座って、音楽を聴きながら本を読んでいた。 そんな、先輩が。 私を呼ぶ時だけ、声を弾ませる。 パッと、まるで花が咲いたように笑顔になる。 それはいつも、私に堪らない優越感を与えた。
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