第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「オイ! オイって! さっきから黙って聞いてりゃ言いたい放題だな。オッサンらが神様ぁ?(ジロジロジロ……)ウソつくな! 威厳もなんもないじゃんか!」 言ってみた、そりゃ言うわ。 つか懐かしい。 曼殊沙華にいた頃もこーゆー客は多かった。 酔うと気持ちがデッカクなって、ビックマウスになっちゃうの。 オッサン達はムキーと地団駄、アタシに詰め寄り言ったんだ。 『ウソじゃないもん! ホントに神だもん!』 『試験受かってるし! 免許もあるし!』 『そりゃあ確かにマイナーだけど! 担当区域は狭いけど!』 うわっ! 近っ! 酒クセェ! 「や! だって! 信じらんない! 神様ってもっとホラ! 威厳があるだろ! ポロシャツチノパン着てる神とか聞いたコトないわ! 神様っていったらダラーッとしたガウンとか、高級そうな和装とかじゃねぇのかよ!?」 突っ込みどころが多すぎて、とりあえず手始めに、会った時から気になり続けたポロシャツから斬り込んでみた。 すると、 『服装……? か、神がポロシャツ着たらダメって規則はないしぃ』 『そ、そーだそーだ、ポロシャツは動きやすいし汗も吸うから良いんだよ』 『それに……ガウンとか和装は、我々みたいな弱小は着にくいと言うか……もっとメジャーで、霊力(ちから)の強い神でないと着ちゃダメって……くだらないけど、そういう暗黙の了解があるんだよね』 そう言って、恥ずかしそうに俯いたんだ。 あ……ヤバ、ちょっと悪いコト言っちゃったかな。 しょぼーんってなっちゃったよ。 「ふ、ふーん。そーなんだ、神様にもそーゆー暗黙の了解があるなんて知らなかったわ、……あ! でもなんとなくワカルぞ! ホステスもさ、基本的に黒いドレスはダメなんだ。でも例外があって、売り上げトップのナンバー1だけ、着ても良いってルールがあるの。ははは、なんかそれに似てるな!」 フォローのつもりでホステスのドレス事情を話してさ、これでゴキゲンなおるかな……と心配したけど、あははぜんぜんダイジョブだった。 オッサン達は ”我々、夜の蝶と一緒だね!” と元気に投げキッスを飛ばしてきたのらッ。
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