第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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3神トリオの関心は、すっかりヤヨちゃんに移ってしまった(ぜんぜん良いけど)。 小さな守護を取り囲み、あれやこれやと話しかけちゃあ盛り上がってる。 なんつーか、楽しそうでなによりだ。 『そう! ヤヨちゃんはカラアゲが好きなの!』 『黒いおべべ(・・・)が似合ってるねぇ! お人形さんみたいだ!』 『好きなテレビは報道番組? あんれー! 賢い子だねぇ!』 【あとネ シちゅーもスキ イロはくろがすき にゅーすたノしい】 わぁぁぁ! 文字が降るたび大歓声のオッサン達は、神の力でカラアゲ出したりシチューを出したり(そんなコト出来たんだ!)、そうかと思えばワンピと言うよりもっと豪華なドレスを出したり(10着はあった!)、電源オフのテレビに入ってキャスターの真似をしたりと(スーツに早着替えする徹底っぷり!)、ヤヨちゃんを喜ばそうと大張り切りだ。 3神達は嬉しそうだった、ヤヨちゃんもゴキゲンだった。 そのうちヤヨちゃんはオッサン達を【じぃじ ジィジ】と呼び始め、オッサン達も『我らが孫よ!』と幸せそうに笑ってるんだ。 ふぅん、ヤヨちゃんが孫ならアタシは娘になるのかな。 しばらくそうして楽しい時間を過ごしてさ。 空が明るくなってきた頃、ここでようやく本来の目的を思い出したんだ。 『ヤヨちゃんは元々は ”人” だったの?』 【んーんー てんてんてん あんまりオボえてナイ】 『ヤヨちゃんも昔は神を目指してたんだって?』 【そうだったカモ てんてんてん】 『ヤヨちゃんは元神候補達が融合して生まれ変わったと、弥生ちゃんが言ってたよ』 【ソレはスこしダけ おぼえてる やよいのチカラでつながッタの】 ヤヨちゃんがアタシの守護になった経緯を3神達が質問してる……けど、ヤヨちゃんはあんまり覚えてないみたいだ。 そだ……思い出したよ。 元神候補達がヤヨちゃんに生まれ変わる時、単純に融合するだけじゃすまなかったんだ。 彼ら彼女らのそれぞれの記憶、人として生きてた頃の記憶、死んだあと神試験に向け頑張った頃の記憶……そういうのぜんぶ、融合した時に失くしてるんだよ。 失くしてるというか、わざと消したんだって言っていた。 よく知らないけど、個々の記憶がまぜこぜになると混乱して人格破壊……? が起こるんだって。 破壊されれば当然、元に戻す事は出来ない。 それどころか融合自体も失敗するって聞いたんだ。
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