第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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◆ 『今夜はとっても楽しかったよ』 3神達はそう言って、シワだらけの顔をさらにクシャクシャにした。 窓を見れば外はだいぶ明るくて、昨日からの濃い夜が終わろうとしている。 「成仏すんのか?」 一言聞けば、オッサンらは揃って仲良く頷いた。 『うん、サトクンも幸せになった事だし、もうなにも心残りはないよ』 『我々ね、神の免許を返上しようと思うんだ』 『これからは普通のオジサンとして、黄泉の国でのんびりと過ごすつもり』 それぞれ顔は晴れやかだった。 さっぱりとした良い笑顔、でも……なんか勿体なくないか? 「まぁ、オッサン達がそれで良いなら止めないけどさ、せっかく神様になれたのに、辞めちゃって後悔しない?」 神試験は運だ、なんて言ってたけど本当は運だけじゃないだろう。 相当に努力して手に入れた立場のはずだ。 『後悔は……もしかしたら、あとからするかもしれないね。でも良いの、決めた事だから』 『サトクンに救ってもらってからの数年間、本当に楽しかった。立派な祠を作ってもらって、毎日拝んでもらってさ。恩返しにサトクンと ”前島リフォーム” を全面推しで、あれやこれやと手助けしてきたけど……最後はね、サトクンが幸せになってくれたから大満足だよ』 『あ、言っとくけど、サトクンの恋に一切手助けしてないからね。あれはサトクンの想いと誠実さが桜ちゃんを射止めたんだからッ!』 ふぅん、そっか。 恋だけはノータッチだったのか。 そうだよな、好きな人の気持ちは自分で手に入れたいよな。 3神達は若いサトクンをもどかしく思いながらも見守ってきたんだ。 【じぃじ ジィジ またあえル?】 テテテと前に。 3神を視上げながらヤヨちゃんがそう聞くと、 『会えるよぉ! すぐじゃないけど、弥生ちゃんが長生きしてお婆ちゃんになって、いつか命が終わった後はジィジ達がいる黄泉の国に来るんだ。その時はヤヨちゃんも一緒だろう? そしたらまた会えるよ。ヤヨちゃん、会えたらまたジィジ達と遊んでくれるかい?』 しゃがみ込んでニコニコと聞き返す。 ヤヨちゃんはその場でピョンピョン跳ねながら、 【うん あそぶ アソブ あそびたい】 文字を降らせて嬉しそうに3神達にダイブした。 神様3人とヤヨちゃんは……いや、元神候補達は互いに抱き合い、またの再会を約束し合ったんだ。
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