第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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◆ あれから暫く。 昼の仕事が忙しすぎて、曼珠沙華の事も3神達の事も薄い記憶になっていたんだ。 宝石屋の仕事はさ、忙しいけど可もなく不可もなくって感じで、給料欲しさに惰性で毎日通ってた。 そんなある夜…… 残業で終電近くの帰宅途中。 駅からの淋しい道を歩いていたら、黒い影がアタシの行く手を阻んだの。 その数はイチニィサンシィ……んー、いっぱい。 全身が真っ黒で、黒タイツ着用ですかぁ? って聞きたくなるよな風貌だ。 ヤツらは下品にニヤニヤ笑って、ハァハァとキモく息を吐いている。 あー、こーゆーの久しぶりだ。 『……オマエ……俺達が視えるのか?』 視える、視たくないけど視えちゃうんだよぉ。 『イイ女だな……泣かしてやりてぇ……』 イイ女? なんだよ、分かってんじゃん。 『コイツに取り憑いてやろう……最終的にはコチラ側(・・・・)に引きずり込んで仲間にしてやる』 それって憑きコロスって意味か? まーそーだろーなー。 黒タイツ野郎共はゲラゲラ笑ってアタシを囲んだ。 キョロキョロとまわりを見れば誰もいない。 それを視たタイツ野郎は、 『助けを呼ぼうったってムダだ。この時間のこの道は誰も通らない。通ったとして、普通の人間に俺達の姿は視えねぇから、誰も助けちゃくれねぇよ。運が悪かったな。オマエは俺達のオモチャになるんだ。アキラメロ』 うっはー! コイツらスッゲェ強気じゃーん! 運が悪かったな、だってよ! チゲェわ、運、悪くねぇよ。 人がいない方がアタシにとって好都合だ。 だってそれなら好きにやれる、アンタ達をぶった斬るコトが出来る……って、ダメだ! 顔がニヤケちゃう! 仕事でストレス溜まっていたし、この所運動不足も気になってたし、明日は休みで時間も気にする必要もない。 グダグタ言ってる野郎共を横目に、アタシは腕を高く上げて口の中でおまじないを唱えた。 ヤヨちゃんが教えてくれた霊力(ちから)の使い方だ。 アタシはどうやら霊能力者というヤツみたいで、霊力(ちから)を使って刀を作り出せるんだ。 日本刀によく似た形で色は紫、ビカビカ光って最高にイカした刀だ。 これがまた不思議な刀で生きてる人は斬れないけれど、ユーレーだけは斬れるんだよね。 コイツら全員真っ黒だから悪い霊だ。 遠慮はいらない、全員この場で滅してやるわっ! 「あのさぁ、運がないのはおまいらの方なんだわ。分かってねぇなぁ。ま、いっか。そんなコトより……さぁ! 喧嘩のお時間です!」 アタシの刀とアタシのセリフに悪霊達はポカンとしたけど、それはすぐに絶叫へと変わっていった。 自分で言うのもなんだけど、アタシ、ツェェエエエエエッ! あっという間に悪霊達は全滅しちゃってツマラナイコトこの上ない、もう終わりかよぉ。
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