第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「あーあ、コイツら弱かったなぁ。とりあえず帰ろっと。動いたらお腹すいちゃったよ。霊力(ちから)を使うといつもこうだ。一瞬で空腹になるんだよ。これってなにか関係あるのかなぁ」 独り言を呟きながら、家に着いたら冷凍ピザを食べようなんて思ってた。 喧嘩にジャマなバッグを道に放っていたから、それを拾って帰ろうとしたその時。 「コレ、お嬢さんのカバンでしょう?」 おわっ! 人だ! 人がいる! いつの間に傍にいたのか、目の前にはめっちゃ小柄なオジサン……? オジイチャン……? が、アタシのバッグを両手で抱えて立っていたんだ。 ヤバ……今の、視られちゃったかな。 「あぁ……うん。アタシのバッグだ。ありがとう、拾ってくれたんだね」 無難にお礼を言ってみた。 視られたかな……でも、ダイジョウブだろう。 霊の姿は普通の人には視えないもん。 オジサンから視れば、誰もいない暗がりで、アタシは1人で暴れてたって思うだけ……って、それってチョット恥ずかしいな。 オジサンはニコニコと笑っていた。 アタシにバッグを手渡した後、それで帰るかな……と思っていたのに、帰りもしないでアタシを見てる。 え……この間、なに? すごく気まずいだけど。 なんだよ……なんか言いたいコトでもあるのか? なんにも喋らずアタシを見つめて、しかもナニコレ、スッゲェ良い笑顔なんだけど。 もしかして……ヘンなオッサンなのかな。 そうは見えないけど、良い人そうだけど、……いいや、とにかく帰ろう。 「じゃ、じゃあ、アタシはこれで」 と歩き出したアタシの背中に、それまで黙っていたオジサンが声をかけてきたんだ。 「あぁん! 待ってお嬢さん! 私、ぜんぶ視てましたよ! あんなにたくさんの悪霊達をあっという間に滅しちゃうなんて……! もしかして、お嬢さんは霊媒師? それともエクソシスト? どこかですでに働いてたりします?」 ドッキーン!! 視てた……? さっきの喧嘩を……? つーか、今なんて言った? ”悪霊達” って言ったよね、と言うコトは……オジサンも視える人? あとあと、”レイバイシ” とか ”エクソシスト” ってなに!? どこかで働いてるかって、宝石屋で売り子やってるけど?
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