第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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視える人に視られてた____ このパターンは初めてだから、動揺しながらおずおず聞くと…… 「はい! 私、”視える人” です! たまたまこの道を通りかかって、お嬢さんが悪霊達と戦ってるのを視たんです。驚きました……だってお嬢さん、とっても強いんだもん。それに霊力(ちから)の使い方も素晴らしい! 言霊で刀を構築するなんて、霊媒師でもなければ出来ませんよ」 オジサン、目ぇキラッキラだな。 つかさ、”コトダマ” ってなんだ? ”おまじない” のコトか? でもって ”レイバイシ” ってなんなんだよ。 「ああそう……お嬢さんは言霊を知らないんだねぇ。その ”おまじない” と言うのが言霊の事だよ。言葉のチカラで自分の霊力(ちから)を引き出して構築する事を言うんです。それとね、”霊媒師”と言うのはね、……」 説明されてなんとなく分かった。 本とか映画で見た事がある、陰陽師みたいなアレのコトだったんだ。 「それで……と、(ゴソゴソ)申し遅れました。私、こういう者です」 オジサンはポケットから名刺を1枚取り出してアタシにくれた。 そこには、 ____株式会社 おくりび     代表:持丸 平蔵 と書いてある。 へぇ、この人社長なんだ。 アタシも名前を聞かれてさ、大倉弥生と教えてあげたらこのオジサン、しょっぱなから ”弥生ちゃん” とか呼びやがるの。 馴れ馴れしいなと思ったけど、不思議と嫌な感じはしない。 聞けば、オジサンの会社は幽霊に関わる依頼を引き受ける仕事をしてるんだそうな。 そんな会社あるんだな、初めて聞いたわ。 「それでね、それでね、……もう思い切って言っちゃう! 弥生ちゃんの持ってる霊力(ちから)は特別なの。誰もが持ってる訳じゃない。霊媒師の仕事はね、霊力(ちから)がなければ務まらない……誰でも出来る仕事じゃないんだ。だから……だから……今の会社を辞めて、その刀、ウチの会社で思いっきり振ってみませんか!」 プ、プロポーズ!? そう思うくらい、オジサンは顔を真っ赤に手を差し出して、アタシに向かって深く頭を下げたんだ。 え、えぇ!? それはつまり、宝石屋を辞めて霊媒師になれってコト? ちょ……それ急すぎだし、霊媒師の仕事の事もオジサンの事も良く知らないのに「ハイ! やります!」とは言えないよ。 必死になって「ウチの会社に来てだしゃい!(噛んでる)」と粘るオジサン。 その必死さに心は揺れるが、こんな深夜に霊媒師のスカウトなんてチョット怪しい感じもしてさ。 少し考えさせてくれって言おうとしたんだ、……でも、その時ふと、3神の最後の言葉を思い出したの。
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