第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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新宿から中野まで、快速電車はたったの5分で移動は完了。 電車を降りて階段も降り、改札を出たところに…………いた、千夏だ。 スレンダーなスタイルに、白いシャツとタイトなデニム。 歩く事を想定したのか足元はスニーカーだ。 ホワイトベージュの淡い髪色、抜けるような白い肌、目鼻立ちは整って美人顔だが幼さも混在している。 一応眼鏡はしてるけど……目立つな、大丈夫だろうか。 千夏の知名度はまだそれほど高くはない、だが、まったくの素人ではないんだ。 まわりに見つかり騒がれてしまったら……事務所に叱られるのは千夏だ。 ここはひとつ気をつけて、人の目を潜るような行動を……と思っていたのに。 ふと、千夏が自分に気が付いた、途端。 「ジャッキー!」 一言名前を叫んだ後に、子犬のように駆け出すとそのまま胸に飛び込んできた。 必死になって抱き着く千夏、通行人がニヤニヤしながらこちらを見ている。 焦っていると腕の中から声がした。 鼻をグズグズすすりながら、うわ言みたいに繰り返し……こう言っていたんだ。 「ジャッキー、ジャッキー……会いたかった、淋しかった、やっと会えた」 その声を聞いた時。 胸の奥がチクリと痛んで、とてもじゃないけど泣いてる千夏を剥がせなかった。 こんなになるまで淋しい思いをさせていたんだ、……罪悪感と愛しさが入り混じる。 だがしかし、このままではマズイ……千夏が千夏である事を隠さなくてはいけない、……ならばこうだ。 剥がす代わり。 華奢な背中に両手を回し、強く強く抱きしめた。 保護するように、慈しむように、誰にも千夏を見せないように、腕の中に包み込んだんだ。
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