第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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◆ 原作本は1巻から最終巻までセットで売りに出されていた。 中々人気の作品らしく、出ていたセットがラストと知って急いでレジに持ち込むと、 「お会計は✕✕✕✕✕円です。それとお客さん、サービスでこちらの小冊子入れときますね。家に帰ったらコッチも是非是非読んでみてください。え? これはなにかって? 俺が書いた小説です。俺、まだ無名だけど、いつかプロの小説家になりたいと思ってるんだ。話のジャンルはファンタジー、タイトルは【戦国時代にタイムスリップゥ?赤点コレクター★レキナのもっと歴史の勉強しとけば良かった!丸腰女子高生、秒単位でライフがピンチ!戦火の中であばばばば!!】。目指せ書籍化、目指せアニメ化で頑張ってるから、良かったら応援してください!」★ ブルーの短髪、若い男の店員が自身の夢を語りつつ、原作本コンプリートと小冊子を袋に入れて渡してくれた。 中を覗けば小冊子は2冊、どうやら千夏と自分の分らしい。 そうか……この人も夢を追っているのか。 千夏と同じだ、2人共夢が叶うと良いな。 …… ………… 「ジャッキー、ありがとう! 家に帰ったらこの原作ぜんぶ読むからね。読み込んでキャラを掴んで、オーディションに挑むんだから!」 見上げる千夏のその顔は、眩しいくらいにキラキラと輝いていた。 原作本、……あって良かった、買えて良かった。 全巻揃って50冊。 予想以上に重たいけれど、これで千夏が笑顔になるなら重量すらも心地よい。 「本は買えた。これで1つはミッションクリアだ。それで? もう1か所行きたいところがあるんだろう? 早速行くかい? それともどこかでお茶でも飲むかい?」 自分は特に疲れていない……が、千夏はか弱い女の子。 体力自慢のスタント仲間と訳が違うのだ。 だがしかし、千夏は頬を薄っすら染めて、 「ふふふ……それがねぇ、この後に行きたい所は喫茶店なの。私も初めて行くんだけど、お茶ならそこでいっぱい飲めるし、ジャッキーがダイジョブならこのまま向かいたいな」 はやる気持ちを隠す事なくそう言った。 「行きたい所が喫茶店? なんで? ……あ、分かった。もしかして、その喫茶店はコーヒーが特別美味しいんじゃない? 千夏はコーヒー好きだもんな」 「ん……ははは、残念ハズレ。そこね、聞いた話によるとそうでもないんだって。どこにでもあるような平凡な味らしいんだ。だからコーヒーには期待しない方が良いよ」 「あらら、そうなんだ。だけど……ん、それならどうして行きたいの?」 コーヒーに期待の出来ない喫茶店。 前もって分かっているのにワザワザ出向く理由が知りたかった。 千夏にそれを聞いてみると…… 「ふふふ……なんでか知りたい? それはね、目的がコーヒーじゃないからだよ。そこは古い喫茶店で、ご年配のご夫婦でやってるんだけど……奥さんがね、有名な占い師さんなんだ。厳しい事を遠慮も無しにズバズバ言うけど、とにかく当たるって評判なの、」 へぇ……そんなところで占いをやっているのか。 なんだか面白そうじゃない。 ★小説家希望の店員さんは十数年後に夢を叶えています。 書いた小説がアニメ化になった事が分かるシーンがこのあたりです。 霊媒師本編に飛びます(*´▽`*) https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=534&preview=1
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