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中野駅から歩く事15分。
街道沿いの大きな神社を通り越し、小道を一本入った所にその喫茶店は建っていた。
見た目はレトロ。
茶色い板壁、色のくすんだステンドグラス、入口付近は大小さまざま植木が溢れかえってる。
いかにもだな、昔ながらの喫茶店だ。
目線を上げれば壁に設置の古びた看板、店名は【喫茶・かすり傷】とあr……ちょっと待て、なんで ”かすり傷” なんだ?
まったく意味が分からない……”コーヒー” とも ”占い” とも関係ないと思うのだが、ここで本当に間違いないのか?
若干の不安が沸いて隣の千夏を見てみると、
「着いた……【喫茶・かすり傷】だ……」
両手を合わせて恍惚と、囁くように独り言ちていた。
という事は、……ん、名前はともかくココで間違いないようだ。
着いたは良いがドアの前でモジモジしている可愛い千夏。
ステンドグラスで中の様子が見えないからか、あと一歩が踏み出せない。
こういう所はやっぱり20才の女の子だな。
しっかりしているようで子供っぽいんだ。
だけどこれ……ははは、放っておいたらいつまででもこうしていそうだ。
仕方がない、ここらで背中を押してみますか。
「千夏、とりあえず中に入ってみようよ」
声を掛けると「う、うん!」と声が上ずって、自分が開けたドアの向こうにおっかなびっくり入っていったのだ。
……
…………
「いらっしゃい、」
カウンターからやる気のない声がした。
見ればそこには咥えタバコの女が1人、ニコリともせず煙を天井に吐いている。
あまりにヒドイ態度だな……だが、度を越えすぎて逆におかしくなってくる。
まさかと思うが彼女が例の占い師なのか?
他にそれらしき女性は……いないな、となるとビンゴだ。
「ジャッキー(ヒソヒソ)、席に座ろ(コソコソ)」
繋ぐ手をクイクイ引っ張る千夏が言った。
見れば客は誰もいない、どこでも座り放題だ。
ならばと2人、選んだ席は窓際の4人掛け……なのだが。
心なしか机の上がベタベタしてて、メニューは開けどページがくっつき捲れない。
中から見てもくすんだ色の、ステンドグラスはバラの花が描かれてるけど、窓枠に溜まった埃がバラより何より目立ってる。
ははは、どうやらココはご夫婦揃って大雑把らしい。
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